経済・金融制裁で一時は大暴落したが…

ロシアがウクライナに侵攻してすでに5カ月近くの月日が経過した。この間、欧米を中心とする国際社会はロシアに対して経済・金融制裁を矢継ぎ早に強化した。この事態を受けてロシアの通貨ルーブルは一時大暴落となったが、現在では「V字回復」を果たし、対ドルレートは侵攻前の水準よりも高くなっている(図表1)。

ルーブルの米ドル相場
出所=ロシア中央銀行

対円レートでは、この春に急速に進んだ円安のため、ルーブルは対ドルレート以上に水準を切り上げた。一時、ルーブルよりも弱い円というフレーズがウェブメディアで盛んに叫ばれていたが、その解釈には慎重を期する必要があるものの、ルーブルの対円レートがウクライナ侵攻前に比べるとかなり高くなったことは確かである。

ロシアルーブルの束
写真=iStock.com/JeKh
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とはいえ、ロシア当局が発表する経済データからは、ロシアの景気が急速に悪化している様相がうかがえる。最新5月の月次の実質GDP(国内総生産)は前年比▲4.3%と、前月(同▲2.8%)から減少幅が拡大した。同月の製造業生産も同▲3.2%と2カ月連続で減少幅が拡大、とりわけ厳しいのが自動車産業である。

具体的に、5月の自動車の生産は前年比▲64.0%と前月(同▲61.5%)から減少幅が一段と拡大した。ロシアの自動車産業は、原材料や部品の多くを欧米からの輸入に頼ってきた。そうした原材料や部品が、欧米からの経済制裁を受けてロシアに輸出されなくなり、ロシアでの自動車の生産が急減することになった模様だ。