親子で対話しながらメリット・デメリットを考える

ただ子どもはまだ成長段階ですから、人生にどんな選択肢があるかすらわからないでしょう。それらの情報を手に入れるテクニックも足りません。ですから、ぜひ親御さんはいっしょに考えてあげてほしいと思います。

伊藤さん
「学校に行き続けることが必ずしも正解ではない」と伊藤さん。(撮影=水野真澄)

このケースの場合、選択肢は「学校に行く」「学校に行かない」の2つがあります。そこで「学校に行く」場合のメリット、デメリット、「学校に行かない」場合のメリット、デメリットをそれぞれ書き出します。そして、それぞれ1カ月後はどうか、1年後はどうかと、短期と長期でも考えていきます。

たとえば学校にこのまま行きつづけると、友だちに会える、勉強を教われる、進路の相談ができるというメリットがあるけれど、やめるとこれらのメリットがなくなるかもしれない。でも、勉強ならオンラインでもできる……、いろいろな選択肢を検討することを親がいっしょにやると、子どもはそんな親の姿勢を見て、「迷っていたけれど、やっぱり学校に行ってみる」と言い出すかもしれません。いずれも親子の対話が重要なのです。

結局、どちらの選択肢にもデメリットはあり、どちらのデメリットなら受け入れることができるか、ということになります。その思考の過程からも多くのことを学べると思います。

それで学校に行くとなったら、以前とは覚悟が違うでしょうし、学校に行かないとなったら、自分の人生の中で、自分の選択の意味を知るチャンスになるでしょう。

学校に行き続けることが、決して正解ではない

ちなみに私には7歳と4歳の娘がいますが、わが家の場合、子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、行かなくてもいいと思っています。

もちろん親子で話し合うでしょうが、本音のところでは行きたくないなら行かなくてもいい。というのも私の妻は、ほとんど学校に行っていないからです。

庭園の自然
撮影=水野真澄

妻は中学校のときに学校に行かなくなり、山村留学という選択肢をとります。そこからスノーボードが好きになって、カナダに留学し、帰国後、日本の大学の卒業資格を得ることができました。

自分の家で暮らした経験が少なく苦労したようですが、それによって自分の身だしなみや荷物を整えるスキルが磨かれた。ミニマムに手早く片づけて、どこでも暮らせるサバイバル能力は尊敬に値するほどです。

学校に行きつづけることが、決して正解ではないということは、彼女自身が体現しているので、子どもが学校に行きたくないと言ったら、そっちの選択肢もあるよ、とわが家ではふつうに思ってしまうわけです。