病院にとっては「いつどんな患者がくるかわからない」

フリーアクセスの最大の問題は、受診者の予測がつかないことです。どういう症状の患者さんが、どのくらいやってくるかわからない。このことが待ち時間の長さのみならず、さまざまなかたちで医療の現場に混乱や疲弊をもたらす要因になっています。

医療サービスを受ける際、人が判断の基準にするのは「アクセス」「医療の質」「費用」です。利用しやすいか、質の高い納得いく医療が受けられるか、費用はどうか――。

日本の場合、医療行為の価格は診療報酬点数制で定められていて、全国一律、大病院でも小さなクリニックでも、やることが同じならば診療費は同額です。しかも、日本は国民皆保険で診療時に支払う自己負担額は原則3割(未就学児や70歳以上は1~3割以内)に抑えられています。入院・手術などで医療費が多額になった場合には、高額療養費制度による補償もありますから、費用面の心配はあまりありません。

患者の脈を取る医師
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

「大病院志向」の患者が増えれば外来は混雑する

どんな医療機関にかかるのも自由で、原則として支払う額が同じ、その負担も大きくない、となると、「少しでも質の高い医療を受けたい」と考えたくなります。

例えば、「通いやすさでいえば近くのクリニックのほうが便利だけど、あそこは先生が一人しかいない。少し遠いけれど大病院に行けば、ちゃんとした検査もしてもらえるし、いろいろなスペシャリストの先生がいるから、大きな病院に行ったほうが安心だ」と考える人が多くなるわけです。いわゆる「大病院志向」です。

こうした発想から、ちょっとした不調やケガでも大病院を受診しようとする習慣の人が増えれば、外来が混み合ってしまうのは当然のなりゆきです。

フリーアクセスという日本の医療の仕組みによって、こうした「大病院志向」がもたらされ、外来が混み合ってしまっている側面もあるのです。