医療者を喜ばせた厚労省の「クリスマスプレゼント」

2019年12月、応召義務に対して厚生労働省が一つの見解を示しました。医師の応召義務とは、患者に対して負っているものではなく、国家に対して負っているものであること、ゆえに時間外受診が「正当な事由」ではないとみなされるケースにおいては受診要求に応じなくてもよい、という内容の通知を出したのです。ちょうどクリスマスに発令されたので、「これは医療者にとってクリスマスプレゼントだ」と話題になりました。

現在では、緊急性の低い症状で時間外受診をした場合、医療機関は「時間外選定療養費」を徴収してよいことにもなっています。こうした対策によって「コンビニ受診」も一時よりは減りましたが、救急外来の状況がガラリと劇的に変わりました、といえるまでには至っていません。

日本人の受診回数は世界トップクラスに多い

OECD加盟国における健康と医療の実績に関して、さまざまな角度からの国際比較データが発表されています。

【図表1】OECD加盟国 年間の医療機関受診回数
日本の年間の医療機関受診回数は世界トップクラス(出所=『医療貧国ニッポン』)

「年間の医療機関受診回数」を見ると、日本は年間12.5回。世界で1、2に受診回数が多いことがわかります(ちなみに、日本よりさらに多い韓国のデータには、漢方や鍼灸しんきゅうなどの治療も含まれているため、一般的な医療機関の受診回数を表しているとはいえません)。

どうして日本では医療機関にかかる回数がこれほど多いのか。理由の第一として、医療費の個人負担が軽いこと、費用を心配せずに医師にかかれることが挙げられます。

二番目に、世界で最も高齢化が進んでいて、高齢者層の医療サービスを求める頻度が高くなりやすいことがあります。厚生労働省の資料によれば、75歳以上の後期高齢者になると、受診回数は年間30回以上と大幅に増加します。歳を重ねるとさまざまな不調は出てきやすいものですが、少子高齢化が著しく、今後若い世代にますます財政的負担がのしかかっていくことを考えると、このまま放置しておいていいはずがありません。

三番目に挙げたいのが、一人がいくつもの医療機関にかかるのが常態となっていることです。いま、あなたは医療機関の診察券を何枚持っていますか? 家には家族みんなで何枚の診察券がありますか?

内科に耳鼻科に皮膚科に歯科……お子さんのいる人は小児科があり、腰痛に悩んでいる人は整形外科があるでしょう。一人が複数枚の診察券を持っていて、あちこちの医療機関にかかっていれば、全体として受診回数は多くもなります。