病院の待ち時間はなぜこんなに長いのか。医師・医学博士の奥真也さんは「『誰でも、どこの医療機関にでも自由にかかれる』という国は珍しい。個人の意思で医療機関を選択できるのはいいことだが、一方で病院からすれば『どんな患者が、いつくるかわからない』状態になっている」という――。
※本稿は、奥真也『医療貧国ニッポン』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
外来診療の医師の数が足りないから?
病院に対する患者さんの不満で最も多いのが、外来診療の待ち時間の長さです。皆さんも、待ち時間の長さにうんざりした経験がありませんか?
「体調が悪いなか、長時間も待たされるのはとてもしんどい」
「予約しているにもかかわらず、時間通りに診察室に入れたことがない。すべてがスピードアップしている世の中で、こんな時間のルーズさが許されているのは病院だけ」
病院側も、待ち時間の短縮や解消に向けてさまざまな対策を講じていて、ひと昔前に比べるとだいぶ改善されてきていますが、根本的な解決には至っていません。
そもそも、病院の外来が混み合って待ち時間が長くなる原因はどこにあるのでしょうか。医師の数が足りない? 病院そのものが少ない?
日本のフリーアクセス制は医療先進国では珍しい
たしかに、医師不足や地域による病院の偏在は、いまの日本の医療体制の課題ではあります。しかし、外来の混雑を生んでいる問題の本質はそこではなく、「誰でも、どこの医療機関にでも自由にかかれる」という日本独特の医療の仕組みにあります。
患者さんが病院や診療所を自由に受診できることを「フリーアクセス」といいます。日本では当たり前のこととして行われていますが、医療制度の充実している国々でフリーアクセス制が採られている国はあまりありません。日本のような医者のかかり方はかなり珍しいのです。
個人の意思で医療機関を選択できるのはいいことのように思えますが、自由度が高いということは、デメリットも多いのです。