市民権を裁判所に認めさせるのは困難だった

【ルーベンシュタイン】性差別の解消とそれに関する法律の制定というあなたの先駆者としての努力が、どうACLU(アメリカ自由人権協会)につながっていったのでしょうか?

【ギンズバーグ】それは、私が教えていたラトガーズの学生たちが、女性と法律に関する講座を望むようになったのがきっかけでした。そこで私は図書館へ足を運び、ひと月のうちに、連邦が下した性差別に対する決裁書にすべて目を通しました。重要なものは何ひとつありませんでした。

このころ、ACLUのニュージャージー支部に新しい苦情が寄せられていました。これまでACLUが目にしたことのないもので、苦情を申し立てていたのは、妊娠が始まったときにいわゆる産休を取得した公立学校の先生たちでした。

彼女たちが産休を取った理由が、学校運営にあたっている学区が、『小さな子どもたちに、先生がスイカを飲み込んだと思わせたくない』と心配したためだったというのです。産休は無給扱いで、しかも復職も保証されていませんでした。妊娠した先生たちは文句を口にし始めていました。

一方、家族を健康保険に加入させようと申請したところが、『家族に対する保証を申請できるのは男性のみで、女性は適用外』だと言われた女性ブルーカラー労働者がいました。女性労働者は自分自身の保証は受けられても、家族まで加入させることはできなかったのです。

こうして、法の下での女性の地位について学びたいと考えている学生と、ACLUに寄せられ始めていた新たなタイプの苦情が見事に一致することに気づきました。

それは私にとって、計り知れないほどの大きな幸運でした。なぜなら70年代の初めまで、裁判所に、女性も同じように市民権を持つ存在なのだと認識させるのは、ほぼ不可能に近かったからです。

「アメリカ本来の姿ではない」カーター大統領の英断

【ルーベンシュタイン】あなたは性差別を取り上げたACLUの数多くの訴訟に勝ち、多くの人に名前を知られるようになると、その後、今度はコロンビアで教鞭をとりました。そしてジミー・カーター大統領から、コロンビア特別区の合衆国控訴裁判所に行くよう求められます。大統領からの指名には驚きましたか? 裁判官になりたいと思いましたか、それとも教授のままでいいと思っていましたか?

【ギンズバーグ】カーター大統領は、今日の連邦裁判官の顔ぶれを決める偉大な決断をしました。彼は大統領就任後、裁判官たちが自分と同じような顔ばかり並んでいることに気づいたのです。つまり全員白人で、全員男性でした。これは本来のアメリカの姿ではない——カーター大統領はそう感じました。

そこで彼は連邦裁判所の裁判官に、女性とマイノリティグループのメンバーをなるべく多く就かせたいと考えたのです。それは単なる一時の興味からではありませんでした。

彼は25人以上の女性を地方裁判所の裁判官に任命し、11人の女性を控訴裁判所の裁判官に任命したと思います。私は11人のなかの最後でした。