年金分割には2種類ある

この「離婚時の年金分割」には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

なお、この制度は夫婦のいずれかが厚生年金に加入している人が対象です。自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者は厚生年金ではないので、適用されません。また入籍前や離婚後は分割の対象にはならないので注意してください。

また、請求期限もあります。原則どちらも、離婚した翌日から起算して2年以内となっています。すでに離婚をしていても、2年以内なら請求することができます。2年過ぎてしまっていたら、残念ながらダメです。

・「合意分割」
「合意分割」は、当事者(妻と夫)の間で分割する方法で、どちらか一方、あるいは双方が請求することで可能になります。分割の按分は、当事者の合意で決められます。もしも合意にいたらないときには、家庭裁判所が決めることになります。按分割合は最大でも2分の1までです。対象は2007年4月1日以降の離婚です。

・「3号分割」
「3号分割」というのは、国民年金の第3号被保険者(専業主婦〈夫〉)からの請求によって行われます。こちらは平成20(2008)年4月以降の婚姻期間が対象になり、この間の夫(妻)の厚生年金を2分の1に分割できます。
3号分割に、当事者の合意は必要ありません。そのため請求すれば、ほぼ自動的に半分の厚生年金を受け取れます。

「年金分割」をすると給与の高い方が減額になる?

D子さんの場合を見てみましょう。

D子さんの平均月収50万円(年収600万円)、夫の平均月収35万円(年収420万円)という夫婦です。婚姻期間は12年で按分割合を50%だとすると、次の結果になります。

D子さんの婚姻期間中の厚生年金(比例報酬部分)は、年間約40万円。
夫の婚姻期間中の厚生年金(比例報酬部分)は、年間約28万円。

これを足して2で割るので、D子さんの厚生年金のうち、年間約6万円が夫の方に行くということになります(年金分割の結果は、D子さんの厚生年金34万円、夫の厚生年金34万円となります)。

夫に「ギャフン」と言わせるつもりが、これでは逆に自分が「ギャフン」ということになってしまいます。これは、夫には知られたくないことになってしまいました。

お金の精算をする夫婦
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

D子さんの場合には、妻の給与が高いからですが、逆に妻の給与が月額35万円、夫が月額50万円という場合には、夫の厚生年金の約6万円が妻の厚生年金に移行するということになります。夫がフリーランスで妻が会社員だった場合は、婚姻期間中の妻の厚生年金(比例報酬部分)の半分が夫の厚生年金に行くということになります(按分割合が50%のとき)。