脂質よりも糖質の摂りすぎに気を付けるべき

なお、肝臓にたまる脂肪はどこからくるのでしょうか。食事から摂った肉や魚の脂や揚げ物の油と答える人が多いのですが、実は食事で摂った脂質が直接影響するのはわずか14%にすぎません。残りの86%のうち、60%は体についている皮下脂肪と内臓脂肪が溶け出した脂で、糖質から肝臓で合成される脂肪が26%です。

ですから、食事で気をつけるべきは、脂質以上に“糖質の過剰摂取”なのです。特に、米、小麦、砂糖という「精製糖質」が肝臓脂肪を増やすことを覚えておいてください。

おなかの脂肪をつまむ男性
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誰でも年を重ねるにつれて痩せにくくなるものですが、「体に脂肪が増えるのは当たり前」と見過ごしてはいけません。体重増加は、脂肪肝や糖尿病のほか、あらゆる生活習慣病の入り口になる大きなリスクなのです。

3種類ある脂肪ですが、ダイエット開始とともに同時に減っていくわけではありません。脂肪が落ちるタイミングには時間差があり、①肝臓脂肪→②内臓脂肪→③皮下脂肪の順で落ちていきます。見た目に表れるのは皮下脂肪が落ちてからになりますが、脂肪肝の改善には、一番落としやすい肝臓脂肪をターゲットにすればいいことになります。

1カ月で落としていいのは「体重の3%」まで

肝臓から脂肪を減らすには、体重をどれくらい落とせばいいのでしょう。

これについては、明確な基準があります。脂肪肝がある人は、現在の体重やBMIがどれだけあろうと、また男女差も関係なく、5%減量すると体調がよくなります。7%以上減量すると肝細胞の脂肪化や脂肪肝炎が軽減します。10%減量できれば肝臓が硬く変化していく組織の変化、肝線維化も改善することが知られています。

20代の頃は54kgで、40代になって66kgまで体重が増え、脂肪肝で脂肪肝炎を認められた女性患者のケースでお伝えしましょう。体重自体は20年間で12kg増えています。しかし、いきなり12kg減を目指すことはしません。当面の目標は“体重の7%を減らす”ことです。この方の場合、66kg×7%=4.62kgになります。ですから5kg減を実現できれば、肝臓から脂肪が落ちて、肝炎もなくなると考えられます。

では、その5kgはどれくらいの期間で落とせばよいのでしょうか。1週間で5kg減など、短期間で急激に体重を落とす目標を立てないでください。短期間で急激に体重を減らすと、体に負担がかかり過ぎて、短期間でリバウンドする可能性が高くなるためです。

通常体重は、朝食直前と、夕食直後を比較すると、体重の2%程度増加しています。1カ月に減らす体重は、1日の体重変化の2倍以内にとどめると、体にかかる負担が少なくてすみます。

そのため、1カ月で減らすのは、“体重の3%にとどめる”ことが大切です。この女性の場合なら、66kg×3%=1.98kg。1カ月で2kg減を目指します。

また、体重は1日で最も体重が少ない朝食前に、できれば毎日同じ時間に測定することをおすすめします。

まとめると、当面の目標は現在の体重の7%を減らすこと。ただし、1カ月で落としていいのは、現在の体重の3%まで。これを基準に3カ月間の減量生活をスタートしてください。それが成功し、それでも標準体重以上の方は、ゆっくり減量生活を続けてほしいと思います。