頑張っているはずなのに成果が出ない。そんな「生産性の低い」組織の問題点はどこにあるのか。ラグビー日本代表・前ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏が、チームメンバーの能力を引き出し、結果を出すための方法を明かす。「プレジデント」(2022年6月17日号)の特集「報われる努力、ムダな努力」より、記事の一部をお届けします。
ラグビー前・代表監督 エディー・ジョーンズ氏
ラグビー前・代表監督 エディー・ジョーンズ氏

思い込みは生産性を鈍らせる元凶

「エディーさん」はかれこれ20年以上、世界のトップでコーチングに携わってきたが、常に強調するのは「ビジョン」の必要性だ。

「ビジョンを描く。それがリーダーの仕事としての第一歩です。はじめに誰もが共感できるビジョンを提示することが必要です。2015年のW杯のときは『史上初めてベスト8に進出する』というのが到達目標でした」

共通のビジョンを提示することは、常識や思い込みを取り払うことでもあるとエディーさんは言う。

「選手だけではありません。日本の関係者には『勝てない』という意識が染みついていました。たとえば、現代のラグビーでは8人で押し合うスクラム戦が重要とされています。私がヘッドコーチに就任以前まで、『日本人は体重も軽いし、スクラムを押せるわけがない』という固定観念に囚われていたんです。そのほかにも、『日本は農耕民族なので、狩猟民族には勝てない』と総括する人もいましたよ(笑)。いったい、その言説のどこに科学的根拠があるんでしょうか? ありません。思い込みは生産性を鈍らせる元凶です。リーダーはそれを取り払う根拠を提示し、メンバーに自信を与える必要があります」

「プレジデント」(2022年6月17日号)の特集は「報われる努力、ムダな努力」。自分では努力しているつもりなのに、どうしても結果がついてこない。でも、やり方を少し変えるだけで、まったく違うゴールにたどり着けるかもしれません。本特集では、エディー・ジョーンズ氏や経営トップへのインタビュー、様々な分野の科学的な知見から、努力が報われるために不可欠な「法則」を探っています。ぜひお手にとってご覧ください。