ポーランドが「平和維持軍」を派兵すれば、第3次世界大戦に
いわゆる平和維持部隊は、ロシア軍と直接衝突する危険が最も少ないウクライナの地域に配置することを計画している。さらにポーランド軍がウクライナ軍よりも配置されている戦略的対象に対する統制を段階的に凌駕していくことを優先的「戦闘目標」にしている。ポーランドの特務機関は、既に現時点で(ウクライナ)ナショナリズムに対抗する民主的「ワルシャワ」を志向する「合意する能力のある」ウクライナ・エリートの代表者を探している。ポーランド当局の計算では、ウクライナ西部における予防的進駐はかなりの確率で国家分裂をもたらす。その際、ワルシャワは「ポーランド平和維持部隊」が駐留している地域に対する実質的な統治権を得る。
ポーランドが「平和維持軍」の名目でウクライナに派兵すれば、ロシアは敵対行動と見なしてポーランドを攻撃する。それが第3次世界大戦に発展するというラブロフ外相の警告は、決して脅しとは思えません。
リトアニア、ハンガリー、ポーランド…立ち位置の違う周辺国
4月27日の本連載で、リトアニアが危ないという話をしました。リトアニアとポーランドに囲まれたロシアの飛び地の領土カリーニングラードの国境を、リトアニアが封鎖しようとする動きがあったからです。しかしロシアからの警告が効いたようで、封鎖は行われていません。戦争拡大の発端になりそうな場所は、ポーランドに移ったといえます。
戦争から距離を置く判断をしたのが、ハンガリーです。4月3日の総選挙で与党を勝利させたオルバン首相は、ウクライナへの軍事支援はしないことを表明しています。ロシアからの天然ガス輸入は止めず、ロシアが要求するルーブル払いにも応じています。EU欧州委員会が決めたロシア産石油の輸入禁止についても、明確に反対する立場です。
ロシアの国営エネルギー大手「ガスプロム」は、ポーランドを通る「ヤマルパイプライン」を経由した天然ガスの供給を停止すると発表しました。緊張が高まる東欧で、ポーランド情勢から目が離せなくなってきました。逆にハンガリーは、安全な場所だといえます。ロシアの侵攻が始まって以来、EU諸国の結束は固まったように報じられていますが、足並みはそろっていないのが現状です。
(構成=石井謙一郎)