「ソフトバンクにプラチナバンドが割り当てられたのは、同社が日本のPHS事業を守ったご褒美だ」(総務省関係者)
総務省は、大手携帯電話会社3社の中で唯一、プラチナバンドを持っていなかったソフトバンクに900メガヘルツ帯を割り当てるが、決め手になったのはソフトバンクの傘下入りしたウィルコムがV字回復を果たしたことだった。
プラチナバンドとは、携帯電話がつながりやすい700~900メガヘルツの周波数帯のこと。ソフトバンクの携帯はビル陰や山間部だと電波が届かず、利用者から「つながりにくい」と不満が出ていた。NTTドコモとKDDIはすでに800メガヘルツ帯を持っているが、後発組のソフトバンクは、過去に総務省としばしば対立し、プラチナバンドの割り当てを受けられなかった。
「障害物を回り込んで携帯に電波を届けられるプラチナバンドの獲得は、ソフトバンクの悲願だった。900メガヘルツ帯でソフトバンクがライバル2社を抑えたのは、総務省が不仲だった同社と“手打ちした”ことを意味する」(前出関係者)
これによって、iPhone加入者の急増で不安視されていた同社の通信障害対策も大きく前進。孫正義社長は「大変うれしく思っている」とコメントした。
ソフトバンクに決まった理由としては、同社がプラチナバンド活用のための基地局整備などに8207億円を投じ、今年7月から利用開始する計画を立てたことなどが挙げられているが、やはり決定的だったのはウィルコムの立て直しだ。
携帯の普及によってPHS契約者数が激減する中、PHS会社のウィルコムは2010年2月に会社更生法の適用を申請、同年8月にソフトバンクとスポンサー契約を締結した。孫氏は右腕の宮内謙氏をウィルコムの社長に送り出したが、10分以内の国内通話なら月500回まで追加料金なしでかけられる「だれとでも定額」が大当たり。若年層を中心に契約が急増し、早くも今年度黒字化の見込みだ。
「日本のオリジナル技術であるPHSを電波官僚は何としても守りたかった。ウィルコムが短期間でV字回復したことに電波官僚は大喜び。プラチナバンド割り当てはそのご褒美です」(前出関係者)
ソフトバンクの勢いは止まらない。