虚偽の内容を記入した捜査報告書を作成し、市民団体から虚偽有印公文書作成などの容疑で告発されている元東京地検特捜部の田代政弘検事が4月1日、任地先の新潟地検から東京の法務総合研究所の総務企画部付兼教官に異動した。

検察庁が田代検事の立件の可否などを決めるのは4月以降の見込み。今回はそれをにらんだ異動と見られている。

田代検事は、小沢一郎民主党元代表による政治資金規正法違反事件裁判に絡み、小沢被告の元秘書、石川知裕衆院議員を2010年5月に再聴取。その際、実際にはなかったやりとりを記入して捜査報告書を作成、当時の特捜部長に提出した。

その後、捜査報告書は東京第五検察審査会に証拠として提出され、検察審査会による小沢強制起訴議決の決め手になった。このため小沢被告側は「虚偽の捜査報告書に基づく議決は無効」と主張。小沢被告の虚偽記載・不記載の共謀罪と議決の有効性について、4月26日の一審判決で東京地裁がどのような判断を下すか注目されている。

「小沢被告との共謀を認める供述をした石川調書は田代検事のチョンボで証拠採用されなかった。このため小沢無罪判決を予想する声が強いが、判決は蓋をあけてみないとわかりません。検察庁としては、とりあえず田代検事から事情を聞きやすい在京の閑職ポストに移したということ。判決への影響も考慮し、検察庁が田代問題の対応を決めるのは一審判決後になりそうです」(司法担当記者)

大阪地検特捜部による証拠改ざん事件絡みで逮捕された当時の特捜部長らに一審有罪判決が出るなど、検察に対する世論の目は極めて厳しくなっている。捜査報告書の虚偽記入について、田代検事は小沢裁判の法廷で「思い出しながら作成したので記憶が混同した」と釈明したが説得力はゼロ。検察庁としても世論の手前、何もしないわけにはいかない。果たして、田代問題はどう決着するのか。

「もし田代検事を起訴したら、検察批判がさらに強まるのは確実。報告書の作成を命じた上司ら上層部に累が及ぶ恐れもある。このため検察としては絶対に起訴は避けたいところ。田代検事の“勘違い”という言い分を認め、行政処分(懲戒処分)で終わらせるのではないか」(同前)

懲戒は重い順に免職、停職、減給、戒告(譴責)で、「戒告の可能性が大きい」(同前)。世間が納得するかどうか。