野田佳彦首相が政治生命を懸ける消費税率引き上げ関連法案。成立すれば消費税率は2年後に8%、翌年には10%に引き上げられ、さらにデフレと景気後退を高進させる恐れがある。
新聞・活字離れが進む新聞業界も、その大波からは逃れられない。朝日新聞社の幹部が言う。
「朝日新聞は消費税率引き上げを主張しているが、それは欧州財政危機を目の当たりにして、早急に日本の財政を再建しなければならないとの考えから。しかし消費税増税の主張は、経営的には自分で自分の首を絞めるようなもの。消費税増税を機に、生き残りを懸けた新聞界の再編が進むだろう」
欧州の新聞が非課税や軽減税率扱いされていることから、新聞界では「活字文化は大事」(読売新聞の渡邉恒雄グループ本社会長・主筆)として、新聞の例外扱いを求める声があるが、そんな虫のいい話がまかり通るはずもなく、新聞も否応なしに10%の消費税を払わされるだろう。
問題は、増税分を価格転嫁するかどうかである。注目は、1000万部という日本最大の部数を誇る読売新聞の動向だ。
先の朝日幹部が話す。
「朝日が入手している情報では、読売側は、増税になっても値上げはしない方針だという。つまり増税分は価格に転嫁せず、赤字を自社で被るつもりだ。ライバルの読売が値上げしないのなら、朝日が値上げするわけにいかない。そのため朝日では、増税による5%分を捻出するため、さらなるコストカットや地方での部数拡大を推し進める方針です」
だが、朝日、読売に日経を加えた“勝ち組”には損を被るだけの体力があるのだろうが、「経営難の毎日、産経は値上げせずに済ませるのは難しい。だが、他社が値段を据え置く中で、もし値上げすると、部数がいま以上に激減する恐れがあり、単独での生き残りが難しくなるかもしれない」(産経新聞社幹部)。
産経は、夕刊の廃止や、「社員の賃金を抑えたうえで、ボーナスを限りなくゼロに近い水準にカットして凌いできた」(産経中堅社員)というし、毎日も共同通信との連携に活路を見出そうとしているが、状況は厳しい。消費税増税による新聞界の大幅再編は不可避だ。