急速に増加する「早期退職募集」
中高年層の問題は「全く働かない」ことではありません。仕事を完全にサボる人がいるのは、中高年でなくても、どの世代にも見られる現象です(※1)。
その中で中高年が矢面に立たされがちなのは、「高い給与をもらっているのに働かない」、もしくは「かつてのようには働かない」傾向があるからというほうが正しいでしょう。
つまり、「期待されている賃金分の成果を出さない」「パフォーマンスと賃金のギャップ」こそが問題になっているのです。この問題に対しては人材マネジメントのあり方を十分に理解する必要があります。
組織の平均年齢が高齢化し、50代前後のバブル入社層が厚くなっている現在、分厚い中高年にそうした不活性層が多く存在することは、企業にとっても極めて重要な経営課題になっています。
ここ数年は、リストラの一環として伝家の宝刀である「早期退職募集」が急速に増加しています。
これらの「働かない」問題は、読者の方々にとっても職場で感じるところがあるのではないでしょうか。この問題は、中高年本人が感じている課題ではありません。むしろ通常は、職場の中の若手や次世代のビジネスパーソンとの「すれ違い」、いわば軋轢として顕在化します。
「最近の若手は頼りにならない」といった若者論はいつの時代にもあるものですが、昨今は「おじさん論」として中高年層にその批判の矛先が向けられることが多くなっています。
テレワーク下で出社する姿はかつての「フラリーマン」
また、テレワークによって同じ職場・オフィスといった時空間をともにすることが少なくなったことが、こうした風潮に拍車をかけています。
「帰らない」――2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中で在宅勤務が一気に広がりました。感染拡大の波は不規則に日本を襲い、緊急事態宣言が解除されている時期にもできるだけテレワークを選択することが奨励されました。
そんな中、実際のオフィスには、まるでいつも通りのように出社している男性中高年の姿が多く見られました。「自分と同じような仕事をしているはずなのに、あの人はなぜ出社しているのだろう」と周りの人から不思議がられる男性中高年。
筆者はこうしたコロナ禍における中高年の様子を見ながら、ある現象を思い出していました。それは、数年前、働き方改革が大企業で始まったときのことです。
新橋や新宿といった繁華街で、午後5時・6時といった時間から街をフラフラ練り歩いているサラリーマンの姿が、「フラリーマン」として話題になりました。
残業続きの日々から急に解放された中高年が、まっすぐに家に帰ることなく居酒屋やインターネットカフェなどで暇をつぶし、夜遅くになってから帰宅している様子がメディアでもしばしば報道されたものです。