意外と知らない「がん」の定義

「がん」という言葉を知っていても、正しい知識を持っている人は少ないと思います。敵から身を守るためには、敵の本態を知らなくてはなりません。

がんを定義するのは難しいことですが、一口にいうと「細胞の遺伝子(DNA)の機能異常によって起こる病気」ということになります。「機能異常だなんて、なんだかさっぱりわからない」となりますが、ごく簡単に説明しましょう。

体の細胞は、分裂を繰り返しながら、欠けた所を埋めたり、一定の時点で死んで新しい細胞と入れ替わったりしますが、元の大きさでストップして、それ以上増え続けることはありません。

子供はどんどん大きくなりますが、しかし一定の年齢になると成長は止まり、空まで届くほどの巨人になる人もいません。それらは全部、細胞のDNAの中にプログラムされていて、非常にうまくコントロールされているのです。ところが、細胞ががん化すると、そのプログラムが狂って分裂が止まらなくなり、腫瘍と呼ばれる塊になります。つまり、細胞の機能が異常化した時、がんという病気が始まるわけです。

「腫瘍があります」と医者にいわれることがあります。腫瘍=がん、と考えがちですが、これには良性と悪性があります。どちらも細胞が分裂を繰り返して大きな塊になっていくのですが、この2つの決定的な違いは、悪性腫瘍は転移するということ。良性腫瘍はどんなに大きくなっても他へ拡がらないので、その部分を取ってしまえばよいのですが、悪性腫瘍は別の場所へも飛び火して、そこでまた大きくなって、最後は体中が腫瘍細胞に乗っ取られてしまうのです。

CTで撮影した患者の肺の断層撮影をチェックする人の手元
写真=iStock.com/peakSTOCK
※写真はイメージです

「がん」と「肉腫」、悪性度はどちらが高いか

悪性腫瘍には「がん」と「肉腫」があります。これは発生の段階で、上皮性由来と非上皮性由来とで区別した専門的な分け方です。大まかにいえば、上皮性はたどっていけば外界に通じる臓器に発生したということで、それをがんといいます。皮膚はもちろん、消化器も外界と通じていますし、肺や腎臓、膀胱も外界と通じる臓器なので、できた腫瘍は皮膚がん、肺がん等と呼びます。

ところが肉腫は、骨や血管、筋肉といった、外界と隔離された部位にできた腫瘍で、骨肉腫とか横紋筋肉腫等という呼び方をします。肉腫の方が悪性度が高いことが多く、骨肉腫等は10代、20代でも起こります。

腫瘍の分類
図表=筆者提供

悪性リンパ腫はリンパ腺の肉腫、悪性黒色腫はホクロが悪性化したものです。足の裏と手のひらのホクロは常に刺激を受けているので悪性化しやすいのですが、テレビでこの話が出るとホクロのある人は皆、心配になって医者のところへ飛んできます。急に大きくなったり、境界が不鮮明なのは要注意です。

脳腫瘍は、良性でも悪性でも同じ呼び方をしますが、これは良性といってもあまりに大きくなると頭蓋骨の中で脳を圧迫して命の危険が出てくるので、悪性と良性の区別なく手術するからでしょう。