幕末の日本に生まれた「ナショナリズム」

【小太郎】高杉晋作、カッコよすぎます! でも功山寺に誰も集まらなかったら……。

【つきじい】晋作は一人で藩に訴え、受け入れられなければ切腹するつもりだった。カネや命はどうでもいい。仲間たちを、長州を、日本を守ろうとした。そういう覚悟があったから、仲間たちの心を動かし、決起は成功した。

【小太郎】先生。フランス革命のときの義勇兵を思い出しちゃいました。

【つきじい】小太郎くん、まさにその通りなのだ。身分や出身地を超えたナショナリズム――「フランス国民」という仲間意識がフランス革命で生まれた。その70年後、幕末の日本で「日本国民」意識が生まれ、明治維新につながった。

明治維新の本当の目的

【小太郎】明治維新って、革命だったんですか?

【つきじい】幕府を倒したという意味では革命に似ているな。しかし、幕府を倒すのが目的でなく、外国の侵略から日本を守るのが明治維新の目的じゃった。

【つきじい】そのためには、日本人が団結しなければならない。しかし長州藩は、地方政府に過ぎない。そこで、天皇を新しい国の中心にした。だから革命というより復古じゃな――「元に戻す」、という意味じゃ。

【小太郎】天皇って、昔の天皇とつながっているんですか?

【つきじい】天皇家はつながっている。平安時代には藤原氏に政治権力を奪われ、鎌倉時代からは幕府に政治をまかせた。天皇は、宗教儀式だけを行うようになっていた。

【小太郎】なるほど。

【つきじい】フランス革命では国王を処刑してしまった。この結果、国がまとまらず、混乱が続いた結果、ナポレオンが皇帝になることでやっと落ち着いた。

【小太郎】そうか、日本には天皇がいたから、めちゃくちゃにならなかったのか。