もし、私が東大祝辞をするなら
以下、「もし私が東大入学式で来賓になったら」という仮定のもとに祝辞を作成してみた。
この度は、入学おめでとうございます。この日に向けて、皆さんの長年の勉強と努力が実を結び、栄冠を勝ち取られたことと思います。
でも、新入生の皆さんにはあまりおめでたくない現実を話したいと思います。
皆さんの多くは首都圏ならば6年間の中高一貫進学校、地方でも地域トップの進学校出身者が大部分で、ご両親や高校時代のクラスメートのほとんどが「大学進学が当然」という考えだったのではないでしょうか。
しかしながら、日本全体の大学進学率は2021年データで男性58.1%、女性はさらに低く51.7%であり、都道府県別では東京都69.0%、沖縄40.8%と報告されています。地方では今でも「大学に行かない若者」のほうが多数派で、「女子はムリに大学行かなくてもいい」と主張する父兄も一定数存在します。
また、2018年の調査では、「東大生の約6割の世帯収入は950万円以上」というデータがあります。一方で、2020年の調査では「日本人の平均年収は420万、青森県は371万円、さらに青森県女性は305万円」というデータがあります。皆さん1人分の昨年度の教育費総額を下回るレベルの収入で、慎ましく暮らす母子家庭……も決して珍しくはないのです。
皆さんは勉強をよく頑張り、見事合格を勝ち取りました。ただ、皆さんの多くが自然に手に入れた私立進学校・塾・予備校・個室の勉強部屋といった環境が得られず、受験できない人もいます。あるいは大きなハンデを負いながらも受験戦争に挑み、散った若者も存在することを忘れないでください。