ゴールドラッシュが起きたのは独立以降

実は当時、北米はそれほど重要な地域ではありませんでした。今でこそ、資源大国・農業大国として栄えているアメリカですが、かつては金などの鉱脈もほとんど発見されておらず、香料やお茶などが採れるわけでもありません。

広大な国土はあったものの、ほとんどが未開の地でした。北米でゴールドラッシュが起きたり、巨大油田が発見されたりするのは、独立以降のことです。

クロンダイクゴールドラッシュ
写真=iStock.com/ilbusca
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当時の北米は、金銀の大鉱山があった南米、貴重な香料が採れた東アジアに比べて、重要度が低い地域だったのです。そこでイギリスは、北米を無税地域にすることで経済の活性化を図ったのでした。

資源の乏しさは、逆に多くの移民を招き寄せる結果になりました。税が課されなかったため、北米は物価が安く生活がしやすい地域になっていったのです。

もちろん、自分たちで開拓する苦労はあります。が、ヨーロッパでたびたび飢饉ききんが起きたこともあり、それを逃れようと大量の移民が北米に渡ることになりました。

もし北米で、早くから重要な鉱山などが発見されていたらどうだったでしょうか? 経済的な自由は与えられず、ほかの植民地と同様、政府肝煎りの独占企業によって支配されていたかもしれません。

アメリカ独立戦争の発端は「フレンチ・インディアン戦争」

北米植民地が発展するにつれ、ここを無税にしていたことは、イギリスにとってだんだん大きな負担になってきました。

北米はフランス、オランダなどと争って獲得した地域であり、それらの国との諍いが絶えませんでした。イギリス本国は、北米植民地を守るためにたびたび軍を派遣しなければならなかったのです。

しかも、北米植民地からは兵の供給がありません。イギリス本国から大勢が入植していたものの、彼らには納税の義務もなければ、兵役もなかったのです。

そのため他国から侵攻されると、防衛のためにイギリス本国から兵を出さなければならない状態でした。もちろん、遠く離れたアメリカ大陸に、本国の兵を派遣するには莫大ばくだいなお金がかかります。

アメリカ独立戦争の約20年前となる1756年、イギリスはフランス、ロシアなどと「七年戦争」を行っていました。

七年戦争では北米も戦地となり、イギリス軍とフランス軍が衝突します。その戦闘は、両軍がインディアン部族と同盟を結んでいたことから「フレンチ・インディアン戦争」と呼ばれています。

イギリスとしては、植民地を守るために行った戦争です。そのため、戦費を北米側に負担させたいと考えていました。