なぜアメリカは「自由の国」と呼ばれるようになったのか。元国税調査官の大村大次郎さんは「アメリカはイギリスの植民地だったが、当時は資源もなにもないと考えられており、経済を活性化するため仕方なく『タックスヘイブン』となった。その後、イギリスが税金を課そうとしたため、アメリカは独立戦争に踏み切った」という――。

※本稿は、大村大次郎『世界を変えた「ヤバい税金」』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

TAX HAVENという用語
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イギリスが北米だけを「自由経済の場所」とした理由

昨今、「タックスヘイブン」が世界の注目を集めています。

タックスヘイブンとは、税金がほとんどかからない(非常に安い)国や地域のことです。多くの企業や富裕層がタックスヘイブンに移転して税金を逃れるようになっており、世界的な問題となっています。

そんなタックスヘイブンの、元祖と言うべき国があります。

それは、アメリカです。現在、世界の超大国として君臨しているアメリカですが、もともとはイギリスの植民地でした。

かつて、イギリスは世界中に植民地を持っていましたが、そのほとんどの地域で経済活動の自由を認めていませんでした。そして、特定の貿易会社に対し、植民地における独占的な権益を与えていたのです。

これはイギリスだけではなく、当時のヨーロッパ諸国はどこもそういう植民地政策をとっていました。

大村大次郎『世界を変えた「ヤバい税金」』(イースト・プレス)
大村大次郎『世界を変えた「ヤバい税金」』(イースト・プレス)

有名なところでは、「東インド会社」があります。東インド会社は、東インドの植民地について貿易を独占していた会社です。イギリスのほか、オランダやフランスに設立されました。

ヨーロッパ諸国は植民地を支配する際、東インド会社のような独占企業をつくり、輸入品などに高額の税金を課していたのです。

ところがイギリスは、北米植民地については経済を自由化していました。原則として誰でも自由に事業を行うことができ、貿易の制限もほとんどなかったのです。

なぜイギリスは、北米植民地にだけは独占企業をつくらなかったのでしょうか?