だから読んでもらうためには、何らかの障害を抱えている人に向けて「負荷の小さい文章」を作る必要があります。自分の作った企画書や履歴書を、何の傷害もない人が、心身ともにベスト・コンディションのときに読んでくれるなんてことは、なずない、と思っていた方がいいのです。
文章のレベルは、趣旨を損なわないギリギリのところまで下げれば、安心です。
どこまで「負荷」を下げるべきなのか?
思い切って「小学生でもわかる」を目標にしてみてください。そこまで下げようとしない限り、なかなか優しい文章は書けないものだからです。
「まるで呪文」…カタカナ言葉は読み手の負荷が大きい
人間には、覚えたての難しい言葉や、専門的な言葉、業界や近い趣味の人にだけ伝わる符丁めいた言葉を使いたがる、という困った癖があります。
例えばビジネスマンの中には、エビデンス、プライオリティ、ペンディングといった輸入言葉を使いまくる人がいます。結果、「その仕事はプライオリティが低いのでエビデンスがそろうまでペンディングにしておいてください」と呪文めいた文を書いてしまう。
こんなの、日本語じゃありません。ぱっと見ただけでも脳にダメージを受けます。
文章がうまくなりたいなら、こういった言葉は、けっして使わないようにしてください。ある言葉を使っていいか迷ったときは、「この言葉は、小学生に通じるだろうか?」と考えてみるといいでしょう。この意識を持つと、無駄にややこしいヘンテコな言葉が世の中にあふれていることに気づくはずです。
「脆弱性」と書きたいなら、立ち止まって「もろさ」「弱点」にする。
「散見される」は、「たまに目につく」と書く。
こんな意識をもつだけで、文章の負荷をどんどん軽くできます。
「小学生でもわかる文章」の感覚を身につけるには、児童書を読むといいでしょう。簡単すぎて読みにくいのでは? と思うかもしれませんが、とんでもない。細かい配慮をもって書かれた文章の読みやすさに、驚くはずです。
図書館の児童書コーナーへ行くと、小学生向けの「経済の仕組み」「お金とは何か」「裁判所って何?」といった本がたくさん並んでいます。このたぐいの本を読むと、「小学生にもわかる文章」に触れることができます。興味のある本を選べば、自分の知識の穴を埋めることができて一石二鳥です。拙著『心をつかむ文章術 無敵の法則』を参考に、読み手の心を一瞬でつかむ文章を書き、仕事に役立ててください。