おもしろい、だから続けている
「うわ、おいしーい!」
春先の疾風が吹きぬける神奈川県三浦半島の丘陵地。ダイコン畑の一角に即席のイベント会場ができている。炊き出し用の大釜からダイコン汁をふるまわれ、子どもらがびっくりしたような歓声を上げる。
主催者は有機野菜の宅配事業で知られる「らでぃっしゅぼーや」。年に数回開いている会員親子と契約農家との交流会の一コマだ。
「ところで石渡さん、キャベツのほうの出来はどう?」
裏方仕事を手伝いながら、懇意の農家と談笑するのは農産課シニアマーチャンダイザーの潮田和也。契約農家の開拓や日常のフォローが仕事である。
会社は2008年12月にジャスダック市場へ上場したばかり。創業したてのホンダやソニーのような勢いがある。土曜のこの日、潮田は埼玉県の自宅から電車を乗り継いで三浦半島までやってきた。
「いやー、忙しいですよ」
イベント会場から近くのキャベツ畑へ移動し、春キャベツの出来を確かめながら潮田はいう。といって、疲れ果てているような様子はない。
それどころか潮田は、月10回以上のライブをこなすギタリストとしても知られている。土日は通常8回だから、あとの2回は仕事が引けてからライブハウスへ駆けつける。へたなプロよりも売れっ子なのだ。
といっても、サラリーマンなので副業は原則禁止。ライブのギャラやCDの売り上げは、交通費や飲み代を残して共演者らへ分配する。