仕事の遅い人は仕事にかかる時間を把握できていない

具体例を挙げよう。たとえば、メール1本返信するとき、仕事の遅い人は、99%の確率で、「なににどれぐらい時間がかかっているのか?」を把握していない。

現に、あなたのまわりの社会人に、「メール1本返信するのに、どれぐらい時間がかかりますか?」と聞いてみてほしい。あるいは、「500文字の報告文を書くのに、どれぐらい時間がかかりますか?」と聞いてみてほしい。ほとんどの人は、「だいたい○○分ぐらいじゃないかな」など、自分の「記憶」を頼りに、曖昧な数字で答えることしかできない。

しかし、これはまずい。なぜなら、スポーツでたとえるなら、「50メートルを何秒で走れるか?」「ウェイトトレーニングで、何キロまでなら上がるのか?」がわからない状態だからだ。つまり、「記録」がなにもないのだ。では、どうすればいいのか? 分解し、計測する。これに尽きる。

定型的なメールで考えてみよう。あなたは営業職だ。いま、お客さんとのアポイントが終わり、お礼メールを送らないといけない。お礼とともに、話した内容の要約を送ると喜ばれるだろう。この場合は、以下のように、タスクを分解し、それぞれのタスクに、自分がどれぐらい時間をかけているのか、ざっくりでいいから、計測するべきなのだ。

・メールアドレスの入力(2分)
・メール文面のベース作成(15分)
推敲すいこう・編集(5分)
・上司へのチェック依頼(10分)
・送信前の最終チェック(3分)
・送信(1分)

こうすることで、なぜあなたは仕事が遅いのか、「なんとなく」ではなく、「構造的に」「ロジカルに」わかるようになる。「記憶」ではなく、「記録」で判断できるようになる。

そうすると、具体的な改善策が見えてくる。たとえば、メールの定形文を事前に準備し、コピー&ペーストで文面をつくる、パソコンの辞書機能を使う、メールアドレスをクラウドで管理するなどだ。

もちろん、毎回測る必要はない。ただ、まず1回やってみるべきだ。

仕事のスピードは若いうちに矯正しないと周囲も指摘してくれなくなる

さて、ここまで読んで、あなたはこう思っただろう。「面倒くさい。だるい。大変そうだ」と。そんな気もちもわかる。私があなたの立場でも、そう思うだろう。ただ、現実的には、仕事がずっと遅いままでいることのほうが、もっと面倒くさいのだ。

ベテランになって仕事が遅いままだと、正直、絶望的なビジネス人生を送るしかない。なぜなら、ベテランになっても仕事が遅い人に対して、まわりの人は指導しようとしないからだ。それこそ、面倒くさいし、時間がムダだと感じてしまうからだ。

だから、面倒くさくても、自分のタスクを分解し、計測する。これを若い頃に、半年に1度でいいのでやってみてほしい。それだけでほぼ100%、ほかの同年代よりも、仕事のスピードが上がってくる。なぜなら、ほかの人はやらないからだ。

そもそも、もっとも効率的な戦い方とは、ほかの人がやらないけれど価値のあることに、先んじて投資することだ。それは「戦略の本質」とも言える。この【計測の法則】もそうだ。