共通の歴史体験を共有するロシアとウクライナの国民

ロシアとウクライナでは、こうした国民意識の共有だけでなく、歴史体験においても共通性が高い点を次に見てみよう。

結局のところソ連崩壊は良かったのか、悪かったのか
市場経済への移行に賛成か

2019年の時点で、結局のところソ連崩壊は良かったのか、悪かったのかを旧共産圏8カ国の国民に聞いたピューリサーチセンター調査の結果を図表4に掲げた。

スロバキア、ハンガリー、リトアニア、チェコ、ポーランドは「改善」が「悪化」を上回っている。ただし、この順で、「改善」超過幅がスロバキアの7%ポイントからポーランドの65%ポイントと大きな異なっている。

一方、ブルガリア、ウクライナ、ロシアの3カ国では、少なくとも経済状況については、「改善」されたが20%台と「悪化」の50%台の半分近くとなっており、プラスマイナスで「悪化」しているという結果であった。

主要国を3グループに分けると、

① 大きく改善(ポーランド、チェコ)
② やや改善(スロバキア、ハンガリー)
③ 悪化(ウクライナ、ロシア)

となろう。

また、「市場経済への移行には賛成か」という同じピューリサーチセンターの調査結果を、こちらは時系列データであるが、図表5に掲げた。こちらも3グループ、すなわち

① 一貫して賛成が多い(チェコ、ポーランド)
② 一時期反対が増えたが今は賛成超過(ハンガリー、リトアニア)
③ 賛成と反対が拮抗きっこう(ウクライナ、ロシア)

が認められる。ロシアは、最近になって反対が賛成を上回った唯一の国である。

このように、旧共産圏諸国の中でも、ロシアとウクライナは過去のソ連崩壊やこれまでの市場経済体制への移行に関して、ほぼ同一の意見を抱く国民が多いことが分かる。

こうした差が生じている理由は、第一に、西欧に近い旧共産圏諸国のほうが、西欧からの工場進出などで市場経済にスムーズに組み込まれやすかったからであり、第二に、ソ連崩壊で旧ソ連諸国は社会主義時代に周辺共産圏諸国よりソ連経済の恩恵に浴していた反動で経済衰退や社会の混乱が著しかったからであろう。

このように、ロシアとウクライナはソ連崩壊後の経緯や苦難の経験の点でも共通性が高いのである。