同性愛許容度でもロシア、ウクライナは同じ方向を向いている

次に、現在、国民性の点で共通するところがあるとしても、今後はどうか、すなわち、ロシアとウクライナでは違う方向への国民意識が向かっているのかどうかが問題となる。

同性愛に対する見方ほど世界を二分する倫理的な志向性はないといえる。すでに昨年5月の本連載では、この点をテーマにし、欧米流の高い同性愛許容度は、必ずしも世界的潮流とはいえず、むしろ世界は二分される傾向である点を明らかにした。

この点に着目し、ウクライナがロシアとたもとを分かち、欧米流に近づいているかを確認してみよう。図表3は、図表2と同じ世界価値観調査の結果から、ドイツ、フランスといった欧米主要国とロシア、ウクライナ、ベラルーシといった旧ソ連諸国の同性愛許容度の推移を追ったものである。日本やエストニアは参考データをして掲げている。

ヨーロッパと旧ソ連諸国の世界観は同じ方向を向いていない

これを見ると明らかなように、この40年間に、欧米諸国は同性愛に対してますます寛容さを高めてきていることがわかる。一方、ロシア、ウクライナ、ベラルーシは、もともと同性愛を受け付けない程度が高かったのであるが、一時期、欧米型に向かうかと見えたが、21世紀に入ってからは、むしろ欧米諸国とは反対に許容度が横ばいに転じている点で軌を一にしている。

日本などは欧米の考え方の影響もあって、ほぼドイツ、フランスと並行して同性愛許容度が上昇してきている。だから、日本人は、それが世界共通の傾向だと思い込んでいるフシがある。実際は、むしろそれは欧米先進国やその影響を受けている国民の傾向であるにすぎず、中国、インドといった途上国やロシアなど旧ソ連諸国などでは同じ方向を必ずしも向いていないのである。

旧ソ連圏の中でもエストニアなどは、日本と同様、国民意識が欧米先進国に近づきつつある。これとは対照的に、ロシアとウクライナは倫理的な価値観がまったく同じ方向へと向かっている点が印象的である。