気候変動は、産業にどのような影響を与えるのか。東京都立大学の宮本弘曉教授は、「気候変動の影響を受ける仕事は3分の1もあり、今後、経済活動や雇用に大きな影響を与える。多くの人が環境に配慮した『グリーン・ジョブ』への転職を余儀なくされるだろう」という――。

※本稿は、宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

地球温暖化のイメージ画像
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私たちの仕事は「安定的な環境」が大前提

気候変動や脱炭素化の動きは、労働に大きな影響を与えます。まずは、気候変動が労働に与える影響を見ることにしましょう。

世の中に存在する仕事は多かれ少なかれ、生態系が提供するサービスに依存しています。農林水産業や観光業などは生態系が直接的に影響するわかりやすい例でしょう。国際労働機関(ILO)によれば、G20における仕事の約3分の1は生態系サービスに直接的に関係しています。

気候変動は生態系サービスに影響することを通じ、経済活動と仕事に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、気温の上昇による農地面積の減少や異常気象の頻発による農作物の生産量減少などは、農業活動やその労働に影響します。

また、気候変動による環境災害も仕事に悪影響を与えます。普段は気づかないことかもしれませんが、私たちの仕事は、環境が安定的であるとの前提に成り立っています。言い換えれば、自然災害により人々の雇用は大きく傷つく恐れがあるということです。

実際、暴風雨や洪水などで、工場やインフラが損傷すれば、それは経済活動を低下させ、雇用にも悪影響を及ぼします。ILOの調査では、2000年から2015年の間に、人間の活動によって引き起こされたと考えられる環境災害により、全世界で毎年、仕事の0.8%が失われたと推定されています。