働く女性が増えているものの、日本の男女の賃金格差は依然として大きいままだ。東京都立大学教授の宮本弘暁さんは「長期的に男女間の賃金格差を縮小するためには、労働市場の流動化が有益です。労働市場が流動的になれば、市場メカニズムにより、労働成果と賃金が一致するようになり、賃金格差は解消されます」という――。

※本稿は、宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

解雇に遭い段ボールにまとめた荷物を横に階段に座り込む女性
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人生100年時代に直面する3つのメガトレンド

今後、日本経済を再浮上させるためには何が必要なのでしょうか? 雇用は生産の派生需要です。つまり、雇用は生産活動があり、はじめて生まれるものです。これは、経済・社会の構造が変われば、おのずと雇用の在り方も変わらざると得ないということを意味します。

日本経済は人口構造の変化、テクノロジーの進歩、グリーン化という大きなメガトレンドの変化に直面しており、人々の働き方、雇用の在り方も変わる必要があります。

人生100年時代となり、今後、人々の職業人生は長くなることが予想されています。職業人生が長くなると、テクノロジーの進歩やグリーン化により産業構造の変化に直面する機会も多くなり、個人がキャリアを変更する可能性も高くなります。経済環境が目まぐるしく変化する中、個人がライフスタイルに合わせて最適なキャリアを実現するためには、働き方や雇用の在り方は柔軟でなくてはいけません。

硬直的な労働市場をいかに流動化するかが課題

そこで、求められるのは流動的な労働市場です。流動的な労働市場とは、労働力の移動が単に活発というだけはありません。労働者が移動する自由が十分にある市場が流動的な労働市場です。

よく、労働市場が流動化すると、解雇が容易になり、雇用が不安定化するため、労働者にとってはよくないと懸念されますが、むしろ逆です。経済環境が変化する中、個人が最適なキャリアを実現するためには、労働者に多くの雇用機会を与える流動的な労働市場が望ましいのです。

逆に、硬直的な労働市場では、労働者が希望する仕事を選択するのは容易ではなく、その結果、雇用機会が縮小、労働者が不利益を被ることになります。実際、IMFの調査研究は、硬直的な労働市場では、雇用率や労働参加率が低くなることを示しています。また、硬直的な労働市場は衰退産業から成長産業への雇用の再配置を妨げるため、生産性や経済成長にマイナスの影響も与えます。

さらに、労働市場の流動性は経済政策の効果にも影響することがわかっています。公共投資などの財政政策は生産と雇用を増やすことが期待されますが、IMFの調査研究は、その効果は労働市場が流動的であるほど大きくなることを示しています。今後、経済のグリーン化を進めるうえで、公共投資の役割は重要になると考えられますが、その成功は労働市場の流動性に左右されうるのです。

このように、経済環境が大きく変化する中では、流動的な労働市場が求められているものの、日本の労働市場は非常に硬直的です。

では、どうすれば労働市場の流動性を高めることができるのでしょうか?