大学経営の安定度を測る重要なバロメーター
2月に入り、私立大学の一般入試がいよいよ本番を迎えた。近年、受験の傾向や大学のランキング動向を取り上げる記事が一年を通じてネット上に氾濫する。その理由は様々だが、大学経営に金融のインフラである債券格付けを組み込んだことも中長期的に影響している。海外から受験競争が輸出されてきている面も無視できなくなってきた。
まずは金融面から見てみよう。
日本の学校法人として最初に債券格付けを取得したのは2003年の法政大学で、AA-(格付投資情報センター)とかなりの高水準だった。言うまでもなく、債券格付けは企業(ここでは大学)が債券を発行した場合、元利払いの確実性を記号で表したものである。経営の安定度を測るバロメーターとして、株式市場や資本市場では欠かせないインフラになっている。
法政大の格付け取得後、早稲田大学や慶應義塾大学、明治大学、青山学院大学、同志社大学、東洋大学、近畿大学などが相次いで格付けを取得・発表し、大学経営に格付けが浸透していった。
高い格付けを得た大学に証券会社が囁いたこと
2003年当時、少子高齢化はすでにはっきり表れている。金融機関は大学に対して、少子化時代を生き抜くために格付けを活用せよとセールストークを展開した。
金融は本質的に資金をため込むばかりでなく、資金を動かすことを求める。金融機関によっては、大学に余剰資金を運用に回すよう助言(格付け取得後にデリバティブと呼ばれる金融派生商品への投資を始めて大きな損失を出した大学が少なからずあった)、その一方でこんな営業をかけた証券会社もあった。
「せっかく高い格付けを取得したのです。低利で債券を発行し、その資金で難易度が一定水準に達している地方の高校を買収しませんか? 今後も少子高齢化は続き、地方の優秀な学生を掘り起こすのは大学にとって経営上の大きな課題になるはずです」
これら難関私大は当時からソニーやホンダ並み、あるいはそれ以上の高い格付けであり、証券会社はこれをテコに地方の優秀な生徒を囲い込んではどうかと提案したのである。