ゴミ出しの仕方も教える中国人向けの受験予備校

大学受験が激化しそうな理由は金融だけではない。「現代の科挙」と呼ばれるほど受験競争が苛烈な中国から、競争が輸出されている面も無視できなくなってきた。

近年、東京・高田馬場駅周辺には見慣れない大きな看板がいくつも掲げられるようになっている。かつて高田馬場駅の周辺は、受験予備校の看板が林立していたが、それらが大きく数を減らすのと対照的に、大学への進学を目指す中国人子弟向けの受験予備校が目立ち始めたのだ。彼らが目指すのは、もちろん日本の難関大学である。

ある国立大学の教授が言う。

「こうした中国人向けの予備校の取り組みは相当なもので、予備校生には日本での暮らしに馴染めるようにゴミ出しの仕方から教えている」

これらの予備校ではすでに東大や早慶などへの合格実績を積み上げており、就労目的の中国人が、隠れ蓑の代わりに経営難の大学に籍を置くのとは明らかに異なる。大学関係者の話によれば、「10年ほど前から日本が国を挙げて留学生を増やそうと取り組み始めたことが影響している」のだという。

学校の校門
写真=iStock.com/wnmkm
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大学受験も大学経営も国際競争にさらされるように

中国で最も優秀な学生は米国の大学に留学し、それに次ぐ一群が日本の大学を目指すようになったのだ。それはちょうど卓球で中国代表になれなかった選手が、オリンピックの出場機会を求めて欧州などに渡って帰化し、その国で代表選手になるケースが目立っているのと似た構図なのだろう。

筆者も大学や大学院のゲスト講師として学生や大学関係者に接する機会があるが、学生の中には当たり前のように中国人学生が交じっているし、彼らに対する大学関係者の評価は極めて高い。大学にとって学生のレベルの維持・向上は、それ自体が有形・無形の資産であり、ある難関大学では近くカリキュラム改革を実施し、よりアカデミックな内容にレベルアップする方針だという。

日本人受験生や留学生のレベルアップが大学教育の水準にまで直結する時代になったのだ。大学経営が国際競争にさらされるようになったと言い換えることもできるだろう。

優秀な中国人予備校生は一般入試を受験するだろうから、うかうかしていると日本人の受験生ははじき出されてしまうだろう。米ハーバード大学の入学審査でアジア系の受験生に対してハードルが高くなっていることが発覚し、「差別的だ」として議論を呼んだのと同じことが日本でも起きるかもしれない。

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