「寝たきりの大黒柱」や「年金ミイラ」で食っていく人々

Oさんによれば、こうしたモンスター介護者の多くに共通することがあるという。それは、「介護する親の年金収入で生活している」ということだ。

医療関係者の間には「寝たきり大黒柱」という俗語があるらしい。寝たきりになった要介護者の年金が生活を支えている大黒柱という意味だ。

「パラサイト=寄生ですよね。親の年金が頼りだから、親が死んでしまったら自分も生きていかれなくなる。それが分かるもんだから精神的に追い詰められ、モンスター的行動に出ることが多いのではないでしょうか」

今回逮捕された容疑者は、母親の年金だけではなく、生活保護も受けていたようだ。年金収入があっても生活保護費は支給される。年金分は減額され最低生活費を保障される形になるが、年金や生活保護など公的なお金が命の綱だったことは確かだ。この容疑者の場合、それに母親に対する偏愛が加わり、親が死んだ絶望感からあのような事件を起こしたのではないだろうか。

年金手帳と一万円札
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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「私は暴力を受けたケースだけでなく、同様の状況にある家を何度も担当していますし、パラサイト介護者は(全国的にみれば)かなりの数にのぼるのは明らかです」

時折、親が死んでも家族が届け出をせず自宅内に放置していた、という事件が報じられるが、それも年金収入がなくなることを恐れてのことだろう。世の中には、「寝たきり大黒柱」だけでなく、そうしたいわば「年金ミイラ」で食っている人の存在も否定できない。

「もちろんパラサイト介護者のなかにも、温厚で真面目に介護に取り組んでいる人もいます。でも、共倒れになる瀬戸際に立っていることに変わりはありません。医師射殺事件を起こした容疑者のようなモンスター介護者は顕在化しているし、潜在的にも多いわけです。在宅介護に従事している職員は、今度の事件で、改めてその怖さを思い知らされました」