開催反対が8割超だったのに強行された東京五輪
年明け早々、2030年冬季五輪を札幌に招致する動きがあると共同通信が報じた。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と日本側が水面下で協議しており、開催地を一本化する時期が今年の夏ごろから冬にかけてという見込みから、年内にも開催が内定するという。
またも日本でオリンピックが開催されるかもしれない。風雲急を告げるこのニュースに、私はとたんに気鬱になった。
新型コロナウイルスのさらなる感染拡大を憂慮し、開催に反対する世論が8割を超えるなかで強行された昨年の東京五輪を、まさか忘れたわけではあるまい。医療従事者に多大な負担をかけ、必要な医療が受けられず自宅で療養する人たちが溢れる「医療崩壊」の一因となった事実を、私は忘れていない。予測される困難に見向きもせず頑として開催へと突き進むその姿勢から、オリンピックそのものの構造的な問題が浮き彫りになった。そうして明るみに出た数々の嘘やごまかしはまだ記憶に新しい。
不祥事や経費膨れ上がりが度々問題となった
IOC総会での安倍晋三首相(当時)による「アンダーコントロール」発言に始まり、票集めとされる約2億円の賄賂疑惑。7月の東京は温暖という虚偽報告に加え、エンブレムの盗作問題や、新国立競技場周辺住民の強制立ち退きもあった。
組織委員会会長が女性蔑視発言で辞任し、開会式の責任者となった元電通のクリエーターも女性蔑視の言動が明るみに出て辞任した。閉会後には13万食以上の弁当および未使用の医療備品の廃棄も明るみになった。
「コンパクト五輪」「アスリートファースト」「復興五輪」というスローガンも、内実が空虚な単なるプロパガンダにすぎなかった。
2021年12月現在、組織委員会が発表した経費総額の見通しは1兆4530億円。