連続殺人犯がスター扱いされやすいアメリカ

という話をすると、決まってメディアは「われわれには国民の知る権利に応える義務がある」とか、「どんな少年か、事件の背景に何があるのか、ということを明らかにすることで同様の事件を防げる」なんて反論をするが、もはやそういう建前的な話では済まされないほど事態は深刻になっている。

それはアメリカを見ればよくわかる。

ご存じの方も多いだろうが、アメリカでこの手の事件が起きた際、報道は日本と桁違いに「自由」を謳歌する。犯人が少年であっても顔写真はバンバン流されるし、自宅前で生中継をして家族や友人も平気で追いかけ回すので、どんな人柄かなども詳しく報じられる。裁判にもカメラが入るくらいなので、犯人自身の姿もバンバン露出する。被告や受刑者になっても、テレビのインタビューに応じたりもする。

犯行現場の現場検証
写真=iStock.com/JJ Gouin
※写真はイメージです

つまり、日本と比べてはるかに、無差別大量殺人の犯人が「有名人」になりやすい環境なのだ。実際、テッド・バンディ、リチャード・ラミレスなど全米を震撼しんかんさせた連続殺人犯は、逮捕されてからメディアの過熱報道によってスターのような扱いになってしまい、刑務所に多くのファンレターが寄せられた。

アメリカで運乱射事件が年々増えているワケ

さて、そんな「犯人が有名になりがちな国」で近年、右肩上がりで増えているのが銃乱射事件である。19年は全米で417件、20年には611件と急増しており当時は「トランプがヘイトを煽って社会の分断を招いたからだ」とかなんだと言われていたが、バイデン政権になっても状況はさらに悪化して、昨年は693件にまで増えている

では、なぜ銃乱射事件は増えているのか。「米社会は格差や人種差別が深刻だから」「やっぱりコロナで孤立している人が多いのでは」など、日本の無差別襲撃事件などのように、その原因を「社会」に結びつける人も多いが、専門家たちは「犯人が有名になる」という現象が「連鎖」を招いていると指摘している。