「今、お父さんとばあちゃんが畳の部屋に座ってこっち見てるよ」

2020年5月。コロナによる緊急事態宣言があったため、ゴールデンウイークの帰省は見送ることに。

7月。近藤さんは息子を出産してから、2週間に1度、息子(義母にとっての孫)の成長を見せるため、定期的にスマホでテレビ電話をしていたが、この頃から近藤さんがテレビ電話をかけても義母が出られないことが多くなり、普通に出られても話がかみ合わないことが増えてきた。

このことを夫や近藤さんより1歳上の義妹に伝えるが、「もともとの性格と年のせいだろう」と言って、あまり気にしなかった。

8月に入ると、義母宅の近所に住む佐賀さん(仮名)から、「お義母さんが、ちょっとおかしなことを言っているんだけど……」と連絡がある。なんでも、立ち話をしていたら義母が、「今日は月曜日だから仕事に行かないと!」と言い出したため、佐賀さんが「違うよ、今日は日曜日だよ。5日の日曜日だよ」と伝えても、カレンダーを見せても、携帯の日付を見せても、「いや、今日は月曜日だから!」と聞かなかったというのだ。

心配になった近藤さんは、その足で義母に電話をする。義母に、近所の佐賀さんが心配していたことを伝え、「大丈夫?」と訊ねると、「佐賀さんが勘違いしたのよ。私は大丈夫よ」と言って笑っていた。

長い間スーパーでパートの仕事をしていた義母は、この頃にパートの仕事を辞めた。理由を聞くと、「お客さんとトラブルになったから」と言っていた。

お盆前、コロナは一向に収まる気配がなく、近藤さん夫婦はお盆の帰省も見送った。

近藤さんは、自分たちが帰省できず、「1人で寂しがっているかもしれない」と思い、義母に電話をする頻度を2〜3日に1度に上げた。

9月。いつものように義母に電話をすると、「今、お父さんとばあちゃんが畳の部屋に座っているよ」と言い始め、近藤さんは面食らう。義母の言う「ばあちゃん」とは、自分の母親(夫の祖母)のことだ。一緒にいた夫が、「何を言ってるの? 父さんもばあちゃんももう亡くなっているでしょ?」と言っても意に介さず、「お父さんとばあちゃんがそこに座って、こっちをじっと見ているよ。何か食べさせたほうがいいのかなあ?」と返答し、まるで義母には2人が見えているようだった。

畳、障子のある部屋
写真=iStock.com/VTT Studio
※写真はイメージです

同じ月、今度は慌てた様子の義妹から連絡が入る。「お父さんにご飯を食べさせないといけないから、仕送りをしてほしい」と、義母から連絡があったらしい。

近藤さん夫婦は、「これはさすがにおかしい」と思い、近所の佐賀さんにお願いをして、義母の病院受診に付き添ってもらうことにした。