診断はアルツハイマー型認知症でも車を運転する73歳義母

病院を受診した結果、義母は中等度のアルツハイマー型認知症ということがわかった。

アルツハイマー型認知症の経過は個人差があるが、その症状は共通の段階を経て現れると考えられている。中等度の段階では、言語や論理的思考、感覚処理および意識的な思考を制御する脳の領域に障害が起こると言われ、症状には、記憶障害や錯乱、家族や友人を認識しにくくなる、新しいことを覚えられない、複数の手順による作業が困難になる、幻覚、妄想、衝動的行動などが含まれるようだ。

義母宅がある地域は、1人1台車がないと生活できない地域だったため、義母は73歳になった当時でも車の運転をしていた。しかし、近くには小学校があり、登下校の時間帯、道路は小学生でいっぱいになる。

近藤さんは、夫と義妹と話し合い、「もしものことがあるといけないので、車の運転はやめさせよう」と判断し、夫や義妹が代わる代わる電話で説得に当たる。

だが、「そろそろ車の運転はやめたほうがいいんじゃない?」と言うと義母は、「まだ年寄りじゃないし、認知症もないから大丈夫」と笑って流した。

脳の形のパズルにはまっていないピースがある
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2020年10月。義母の様子が気になっていた近藤さんは、コロナの感染者数が落ち着いた隙を見て、息子を連れて九州に帰省することに。

夫や義妹は仕事があるため身動きが取れず、専業主婦で動きやすい近藤さんが行くことになったのだ。とはいえ、息子はまだ2歳になったばかり。幼い子供を連れての長距離移動は容易ではなかった。

義実家と近藤さんの実家は隣の市同士なので、帰省中は実家に寝泊まりさせてもらう。しかし、近藤さんの62歳の父親と59歳の母親は、まだ現役で働いているため、平日の昼間は不在になる。1人で置いては行けないため、息子を連れて義実家を訪れると、別人のように痩せこけた義母が出迎え、近藤さんは愕然とした。

「後の病院受診で知ったのですが、2020年の1月から10月までで、義母は約10キロも体重が落ちていたそうです……。冷蔵庫の中は賞味期限の切れた魚と調味料が入っているだけで、野菜なども含め、食べられる物は何も入っていませんでした」

近藤さんは、すぐに義母を車に乗せ、スーパーに連れて行き、食材を購入。義母宅へ戻ると、食事を作り、食べさせ、薬を飲ませた。もともと甘いものはめったに食べない人だったが、約10カ月ぶりに会った義母は、甘いお菓子などを好むようになっており、野菜が多く入ったおかずはあまり食べなくなっていた。

「多分、認知症が進行し、まともな食事はほとんどできなくなっていたのでしょう。義母は高血圧と高脂血症で定期的に病院を受診し、処方してもらっていた薬があったのですが、その薬も約200日分も残っており、ちゃんと飲めていなかったようです」

パートでお客さんとトラブルになり辞めることになったのも、認知症のせいだったのかもしれない。