「失くなった」と騒ぐ財布や印鑑を一緒に探す
義母宅と近藤さんの実家は、車で20分ほどの距離だった。近藤さんは、毎朝9時ごろに息子とともに義母の家へ行き、朝食を用意して食べさせ、薬を飲ませる。
その後、必要なものの買い出しや病院受診、銀行などに連れて行くなどした後、失くなったと騒ぐ財布や印鑑を一緒に探し、昼になると、義母と一緒に昼食の準備をした。
「私が一つひとつ声かけをして、義母ができることはなるべく義母にしてもらうようにしていました」
昼ごはんが終わると、近藤さんは夕食の支度に取り掛かった。夕食の支度が終わると、夕食後の薬が飲めるよう薬の準備を済ませる。
掃除や片づけ、洗濯などをすると、帰宅はいつも夕方だった。
「この頃はまだ介護認定調査の結果が出ず、介護サービスを使えませんでしたし、夫は関東にいたので、息子を連れての私1人での介護でした。そのため、息子と過ごす時間を十分に取ってあげられないことが続き、息子に寂しい思いをさせてしまうことをつらく感じていました」
義母は同じ話を何度も繰り返し、財布や印鑑などの大事なものを毎日のように失くすうえ、金銭管理もできなくなっていた。
さらに義母は、「医者もわからないような何か大きな病気になっているのではないか」と不定愁訴のようなものを口癖のように繰り返し訴え、「病院に連れていってほしい」と何度も懇願してくる。
近藤さんが来ている間はもちろん、ひどいときには実家に帰宅した後でもおかまいなく、数分おきに電話がかかってくる状態だった。
近藤さんは義母の訴えを聞き、定期受診とは別に2度病院に連れていったが、結果は異常なし。
相変わらず、「車の運転はもうやめたほうがいいよ」と近藤さんから直接話して聞かせても、「まだ事故をしたこともないし、まだ若いし大丈夫。車がないとどこにも行けないから」とやはり拒否。
近藤さんは、なるべく義母が運転しなくていいように、用事があるときは近藤さんが連れて行くようにするしかなかった。