治療のおかげで「真冬でも半袖」状態が解消

最初に処方された低用量ピル(マーベロン)は体質に合わず、むくみなどの症状があったが、ヤーズという種類に変えてから副作用は皆無。そして、飲み始めて2週間、症状のうちで一番つらかったホットフラッシュが消えた。それまではいつ症状が出るかわからなかったので、真冬でもジャケットの下は半袖しか着ることができず、風邪ばかり引いていた。「これからは長袖も着られる」。そんな些細なことが妙に嬉しかった。

ホットフラッシュの症状が消えるとともに、ジェットコースターのようにアップダウンが激しかったメンタルも一気に穏やかになった。心に住んでいた猛獣もいつの間にか消え、感情のコントロールも容易になった。それによって人と対立したり、言い合ったりすることもなくなり、人間関係がスムーズに。「消滅した」と思っていたキャリアも、徐々に元通りに、いや、それ以上に回復していった。

当時の私を知る人たちは口をそろえてこう言う。「悪霊にでもとりつかれているかのようだった」と。それほどまでに更年期は、人を変えてしまうのだ。今でこそ笑いのネタになっているが、あのまま放置していたら、ここに存在しているかどうかもわからない。これは決しておおげさではなく、経験したからこそわかる「まぎれもない事実」である。

婦人科検診を受ける女性
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです

「一時的な体調不良」「放っておけば治る」は誤り

更年期は症状がひどくなれば私生活はおろか、私のように仕事を切られるなど、仕事にも悪影響を及ぼす。前出のNHKの調査データによると、更年期によって離職した女性は46万人に上ると推定される。

離職の主たる理由は「仕事を続ける自信がなくなったから」「症状が重かったから・働ける体調ではなかったから」「職場や会社に迷惑がかかると思ったから」などさまざま。今や更年期は、自民党の「女性の生涯の健康に関する小委員会」においても議論される社会全体で向き合うべき問題なのだ。今後は生理休暇のような更年期休暇や、更年期症状で休職した際の収入保証など、職場や国の支援が求められていくと考えられる。