勤務条件は同じでも観察眼が収入の決め手に

タクシーネタが続いて申し訳ないが、タクシー運転手は、稼ぐ人はサラリーマンより稼ぐし、稼げない人は収入も低い。そして毎月、成績上位者は変わらないという職種である。

純粋に平等な条件で働いて、結果(収入)は雲泥の差である。

その差は何が決めているのか。やはり観察眼なのである。この会社は毎週、このくらいの時間に会議が終わってロングの客が出る。この飲み屋は終電を気にしない客が飲む店で、深夜何時頃にロングの客が出る。最後は「勘」の勝負になってくる。

会社からの無線は、どの運転手にも平等に入る。後は、会社の外観から社風を推定し(時間に正確かどうかも含まれる)、飲み屋の外観や会社に入る無線から、客を帰す時間の目安を決めているか否かを割り出す。会議が終わる時間は日によって異なるし、飲み屋が店を閉める時間も客によってはまちまちになるから、けっこう難しい。

タクシーのハンドルを握る運転手の手
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できる人が見るのはテレビプロデューサーの性格

それは道を流していても同じである。どのビルから出てくる人が、タクシーに乗るのか。

「見た目」から「中身」を見抜く力と言い換えてもいい。

私の自宅は、日本テレビの「生田スタジオ」(川崎市)とTBSの「緑山スタジオ」(横浜市)の間にある。当今は経費節約で、撮影も終バスの時間を超えることは少ない。役の小さな俳優や大勢のスタッフさんまでタクシー、というご時世ではなくなった。しかし、大物俳優で運転手付きの車を持っていない人はタクシーで帰宅する。ほとんどの人は山手線の近くに住んでいるので、1万5000円クラスのロングの客となる。

腕のよいタクシー運転手は、ロングをどれだけとるかが勝負の分かれ目となる。

撮影が終わる時間は、プロデューサー次第である。というより、プロデューサーの性格によると言ったほうが正確か。慎重なタイプか、イケイケどんどんなタイプなのか。

撮影終了後、俳優はメイクを落とし、着替えをしてからタクシーに乗る。タクシーの運転手は、プロデューサーの性格に合わせて、待機時間を調整する。

脇役の人やスタッフさんはバスで帰るから、考えなくてよい。大切なのは大物俳優だけの退出時間である。基本的に、プロデューサーが慎重な人なら、終バスの時間より30分早くなる。