人より多く稼ぐ人は何が違うのか。『人は見た目が9割』の著者で非言語コミュニケーションに詳しい竹内一郎氏は「知人のタクシー運転手は、ある方法で1万円以上の長距離を乗る客を見つけ、常連にしていった。稼ぐ人は、そうした『見抜く力』を持っている」という――。

※本稿は、竹内一郎『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

洗濯物で単身赴任者の家を割り出せるように

私は川崎市の住宅街に住んでいる。私がたまに使うタクシーの運転手・Hは、年収千数百万の高収入者である。金持ちなのだから、悠々自適な生活でもすればよさそうなものだが、タクシーの運転手が天職だという。やっていて楽しいそうだ。

Hは、羽田空港にタクシーで行く乗客をたくさん抱えている。私の家の近くは住宅地で一戸建ても多い。Hは、物干し台に干してある洗濯物を見ているうちに、単身赴任者の家がわかるようになったという。物干し台を見るために特別なことをしているのではない。

タクシーを流しているうちに、「あれっ」と気づいたのである。

割に大きな一戸建ての家に、平日だけ男物の洗濯物が一人分だけ干してある。土日に洗濯物が干してあることはない。ということは、男の一人暮らしで、週末は人が住んでいない家だということになる。

干された洗濯物
写真=iStock.com/kazunoriokazaki
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羽田空港に向かう優良企業の重役たち

会社に入ってくる「タクシー、1台お願いします」の電話は、無線で各タクシーに飛ぶ。

Hは会社経由のタクシー無線で、そういう家に客を迎えに行くことがあった。行き先はどれも羽田空港だった。私の家の付近から羽田までは、約1万5000円の距離である。タクシー用語で「ロングの客」という。上客の意味である。

羽田までの道中、客に話を聞いてみると、客は地方に本社のある優良企業の重役で、東京支社に単身赴任で来ていることがわかる。東京の支社長のような立場の人である。

優良企業の重役だから、単身赴任用の宿舎も一戸建てで、羽田への往復も会社の経費でタクシーが使える。それで、平日だけ男物一人分の洗濯物が干してある一戸建ての理由がわかった。平日はヘルパーさんが家事をやっているのである。