戦略計画型の行動が合理的でない局面
コロナ禍にあって次の機会をうかがう各種の飲食店の動きは、この蟻たちなどの行動とどこか似ていないだろうか。
世界中のビジネススクールなどで教えられてきた戦略計画型の行動、つまりあらかじめ綿密な戦略を立案してそれを実行していくというアプローチは、見通しが立つ環境のもとにおいては効果を発揮する。だが未来の正確な予測が極めて難しい状況においては、この方法論が合理的だとはかぎらない。マーケティングなどにかかわる企業や組織のマネジャーの方々には、今の街の飲食店の動きが、戦略計画型の行動とは大きく異なる行動だということに目を向けてほしい。
ニューノーマルだからこそ、犬は歩く
「犬も歩けば棒にあたる」という。この格言をどのように受けとめるか。新しい発想や方法には手を出さず、平時に予定されたとおりのやり方を守っていれば、何かに打たれたり、ぶち当たったりするリスクは減る。そして歩かない犬は、心地よく惰眠をむさぼることができる。
しかし海が荒れ、予想外の天候に巻き込まれれば、そうはいっていられない。船上でのまどろみから、乗り合わせた人も、猫も犬もたたき起こされる。刻々と変化する空と海をにらみながら、船の舵を切り変えつつ、急いで帆を下ろさなければならない。そして総出で櫂を漕ぎ、船内に入り込んでくる水をかきだし、安全な港に逃げ込まなければならない。すぐに行動しなければ、乗っている船が転覆し、嵐の海に投げ出されるかもしれないのだ。
惰性の行動を続けていては、コロナ禍のもとで進行している変化についていくことは難しいし、変化から生じる機会をとらえることもかなわない。ニューノーマルのなかでのマーケティングの課題は、確かな予測や見通しを得ることは困難であっても、行動を止めないことであり、行動を続けることから見えてくる局所での合理的な行動を続けることである。