ロッテリアは今年9月「ジビエ鹿肉バーガー」を全国の店舗で数量限定発売した。単品価格は790円と決して安くはない。11月29日には第2弾も同じく数量限定で発売した。価格は840円だ。なぜロッテリアは高価格帯のハンバーガーを売り続けるのか。マーケティング部マーケティング担当部長の緒方高行さんに話を聞いた——。
11月29日に発売する「ジビエ鹿肉バーガー(3種きのこのコンフィと北海道チーズ)」
画像提供=ロッテリア
11月29日に発売する「ジビエ鹿肉バーガー(3種きのこのコンフィと北海道チーズ)」

コロナ禍でもハンバーガー市場は好調を維持

コロナ禍で飲食業界が軒並み厳しい状況に立たされているなか、ハンバーガー市場全体は伸長している。

ロッテリア マーケティング部 マーケティング担当部長の緒方高行さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)
ロッテリア マーケティング部 マーケティング担当部長の緒方高行さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)

富士経済調べによると、2018年の売上は6780億円に対し、2020年は7431億円と約110%の増加が見られる。緊急事態宣言による店舗休業や時短営業の時期があったものの、身近な日常食として認知されているハンバーガーは堅調な需要を維持した。また、他業態と比べてインバウンド減少や時短営業の影響はあったものの、ドライブスルーに加えてテイクアウトやデリバリーの利用ニーズが増加したことで、市場全体の売上拡大に寄与したのだ。

ハンバーガー大手3社のうち、マクドナルドとモスバーガーはコロナ禍でも2桁成長を遂げている。一方、ロッテリアもデリバリーやテイクアウトなどの新しいチャネルを開拓しながら攻勢をかけている。これまでは店内喫食がメインだったが、コロナ禍以降ではデリバリーやテイクアウト比率が増加し、収益構造が変わってきているそうだ。

しかし、緒方さんは「通常時と比べ、デリバリーにおける配達時の配送手数料やテイクアウト時に必要な容器の包材原価は利益率を圧迫し、顧客を新規開拓できなければ収益性の悪化に影響する。目下の課題は、イートイン比率を回復させることだ」という。

2007年の「絶品チーズバーガー」が転換点

ファストフードの3大ニーズは「うまい」「早い」「安い」と言われている。

2000年代初頭はマクドナルドの「65円バーガー」を筆頭に、「ハンバーガー=低価格」というイメージが消費者に広まった。

そんななか、ロッテリアは2007年に単品で360円(当時※税別)の「絶品チーズバーガー」を発売。連日完売になるほど爆発的に人を呼んだ。

ロッテリアの商品の中で最も売れている「絶品チーズバーガー」(単品396円)
画像提供=ロッテリア
ロッテリアの商品の中で最も売れている「絶品チーズバーガー」(単品396円)

パティやバンズへのこだわりはもちろん、ファストフード業界では珍しいナチュラルチーズの使用など、従来の商品よりも高品質を追求したことでロッテリアの人気No.1商品へと成長した。2010年には、1977年に発売した人気商品「エビバーガー」をリニューアル。エビのプリプリ感を強め、タルタルソースの最終工程を店舗で行うようにした。その背景にはこのような考えがあったという。

「2007年以降、ハンバーガーづくりの原点に立ち、ロッテリアを象徴する商品づくりを心がけてきました。エビバーガーも絶品チーズバーガーも、節目に合わせてリニューアルを敢行してきており、もっとおいしく高品質で、消費者の満足度が高い商品を生み出すために、脈々と取り組んできました」(緒方さん)