「公立躍進の年」でも7割以上は私立

私立中学の部活動時間は平均すると週10.0時間であり、公立中学の週13.6時間より短い。だが私立校には自治体ガイドラインの効力が及ばないため、部活名門校では依然として長時間の練習時間が確保されている懸念もある。

実際、競技成績には「私立/公立」格差が歴然と存在する。

例えば私立高校の数は全国の高校の約3割に過ぎないにもかかわらず、「夏の甲子園」で知られる全国高等学校野球選手権大会では、近年、参加校の約8割が私立校で占められる。2019年夏の大会では出場校全49校のうち14校が公立だったので「公立躍進の年」と言われたが、それでも7割以上は私立である。大会成績についても、2000年以降に開催された計20回の大会のなかで、公立校が優勝したことは1度しかない。

これらの達成格差の理由として挙げられるのが、スポーツ推薦や恵まれたスポーツ環境である。

一般的に公立学校では「練習時間は短く、グラウンドはサッカー部と半分ずつ」であるのに対し、一部のスポーツ名門校は、スポーツ推薦で能力の高い生徒を集めている上に「寮完備、栄養バランスのとれた食堂完備、專用バスあり、運転手雇用、夜間照明付きの專用グラウンド、授業は寝ていてもよいなどという、まるでセミプロのような生活をしている」(長沼2017:61~62)というのである。

いまだ古典的な性役割期待が残る部活動

部活動をめぐる第2の格差として「人に誇れる部活動とそうでない部活動がある」という「名誉格差」を挙げよう。

まず部活動の男女比について見ると、男子中学生の場合は8割以上が運動部員であり文化部員は1割に満たないのに対して、女子中学生は運動部所属が6割程度であり文化部員も3割以上存在する。

高校の場合も、男子の7割近くは運動部員で文化部員は2割に満たないのに対して、女子は運動部員と文化部員がともに4割程度となっている(東京書籍2018:96~99)。

図表2は男女比に著しい偏りのある順に主要な部活動を挙げたものであるが、調理部や華道部、ソフトボール部では女子率が100%に近いのに対し、野球部やラグビー部では男子がほとんどを占める。

部活動には、大正期の「女性に野球は過激」(高嶋2019)や「武道は男性向け、調理は女性向け」といった古典的な性役割期待(『現場で使える教育社会学』第11章)を引きずる形の棲み分けがいまだに残存している部分もあり、生徒が「見えざる性別の垣根」を超えて部活動に参加しようとすると、冷笑されたり着替えに困ったりとさまざまな障壁が立ちはだかる。

また、学級集団には「スクールカースト」や「陽キャ/陰キャ」といった俗語に象徴されるような、「人気やモテ」を指標とした独特な位階秩序が生じやすい。

そして部活動もまたそうした磁場にがっちりと組み込まれる形で生徒の名誉格差に関与する。