2004年、横浜市の中学3年生の男子生徒が、柔道部の練習中に意識不明の重体に陥った。顧問に何度も投げられ、絞め技をかけられたことが原因だった。男子生徒の母で「全国柔道事故被害者の会」前事務局長の小林恵子さんは「日本では中学校・高校の学校内における柔道事故で、28年間に114人も亡くなっている。一方、海外の強豪国ではゼロ。日本の柔道事故は異常に多い」という――。
※本稿は、土井香苗・杉山翔一・島沢優子編、セーフスポーツ・プロジェクト監修『スポーツの世界から暴力をなくす30の方法 もう暴言もパワハラもがまんしない!』(合同出版)の一部を再編集したものです。
柔道部顧問に何度も投げられ、意識不明になった息子
ベッドの上で、息子の身体は明らかに硬直していました。中枢神経の障害によって四肢の筋肉が収縮したサインである「除脳硬直」でした。意識障害の評価方法であるグラスゴー・コーマ・スケールは5点。15点中8点以下は生存困難と言われています。命が潰える寸前でした。
私は、人はこんなにも簡単に死んでしまうのかと唖然として息子を見ていました。「絶対にあの世から引きずり戻すんだ」と強烈に思いました。
2004年12月。その日はクリスマスイブでした。横浜の市立中学校の3年生で柔道部員だった三男は、練習中に意識不明の重体に陥りました。柔道部の顧問Aに何度も投げられ、首への絞め技を2度も掛けられました。その結果、急性硬膜下血腫、びまん性軸索損傷、脳挫傷、頸椎損傷が発症し、側頭部や喉の骨も折れていました。緊急手術で奇跡的に助かりましたが、高次脳機能障害という重い障害が残りました。