ユーロ圏共同債に関する3つのオプションとは

これまでにも話題に上っていたユーロ圏共同債(欧州委員会は安定債(Stability Bond)と呼んでいる)については、今回のEU首脳会議では今後検討していくとした。ユーロ圏共同債導入の可能性に関して、11月23日に欧州委員会より報告書が公表されている。その報告書では3つのオプションが示されている。

第一のオプションは、共同の保証を付けて、各国の国債をすべてユーロ圏共同債に替える。第二は、共同の保証を付けて、各国の国債の一部をユーロ圏共同債に替える。第三は、共同の保証を付けずに、各国の国債の一部をユーロ圏共同債に替える。

第二と第三のオプションにおいては、例えば、経済収斂条件の一つである対GDP比60%までは、ユーロ圏共同債として発行することができるが、それを超える部分については各国の国債として発行することを義務付けるものである。

これらのオプションの間には、金融市場安定化および流動性の観点からは第一のオプションが最も優れている。しかしながら、財政規律やモラルハザードの観点からは第一のオプションが最も劣っている。

さらに、リスボン条約の改正の必要性という点で、第一のオプションは時間を要するが、第三のオプションは時間を要しないというメリットがある。これらのトレードオフがあることから、報告書では、これらのオプションの組み合わせの可能性も提案されている。

ユーロ圏共同債は、「財政安定同盟」から「財政同盟」へ深化するためには必要とされるものの、ドイツがその導入に消極的であるように、いかに財政規律を維持し、モラルハザードを抑制するかが議論の中心となる。

一方で、EUの財政危機が欧州金融機関のバランスシートを毀損し、欧州金融市場を混乱させるのみならず、それが世界金融危機に発展することだけは何としても抑えなければならない。

(大橋昭一=図版作成)