従来型マーケティングの欠点とは
前回(http://president.jp/articles/-/4976)、筆者が日本と米国で行った消費者イノベーション調査について紹介した。
従来、製品開発で主導権を握るのはメーカーだった。そこでメーカーが接触する消費者はメーカーが想定する範囲内で選ばれ、受動的な発言が許される存在でしかなかった。
消費者はメーカーが設定したターゲットを中心に集められ、数もせいぜい数百人程度でしかなかった。また発言や回答の機会が与えられる場合、消費者はメーカーが聞きたい内容について指定された形式で発言、回答するにすぎなかった。
それに対して筆者が実施した消費者イノベーション調査の結果は、日本と米国では広い製品分野にわたってメーカーから自立した創造的消費者が存在することを示していた。それは消費財メーカーがこれまで創造的消費者と出会う機会を逸していた、あるいは出会っていても気づかないでいたことを示唆するものだった。
そうしたことが起こるのは必然の結果だ。従来型のマーケティング調査は、メーカーが消費者イノベーターと向き合い、製品革新に向けて対話する機会を創造するようには設計されてこなかったからである。
調査でわかったように、消費者イノベーターは簡単に所在をつきとめることができるものではなかった。絶対数では無視できないほど多人数でも国民全体に占める割合は数%、特定の製品分野まで対象を絞るとせいぜい1%を切る程度の割合でしかない。
通常の製品開発でメーカーが接触する消費者はあくまでメーカーが想定するターゲットを中心に構成された集団だ。しかも製品開発担当者が標的消費者集団の中に見出そうとするのは一定数以上で存在する消費者ニーズや製品案である。