そうした状況で、たとえ消費者イノベーターがすでに自社製品分野に存在していても、同種のニーズを表明している消費者は1000人いて数人程度。その程度なら多くの消費者に支持される製品案やニーズを求めるメーカーにとっては「少数派意見」でしかない。

消費者イノベーターの声は単なる「マニア・ニッチ向け」や「例外」として扱われ、その結果、彼(彼女)らの意見は新製品案として真剣に検討されることなくその存在が無視されたまま、現在に至っているというわけだ。

消費者イノベーターの半分以上は「一発屋」である

さらに筆者の調査データは消費者イノベーターを見つけ出すのが難しいことを教えてくれる。調査では消費者イノベーターに最近3年間で行った製品創造と改良の回数について質問した。結果は、日本で7.9回、米国で5.6回、消費者イノベーターはイノベーションを行っていた。

この数字だけ見ると読者は製品イノベーションを頻繁に行う多産型の消費者イノベーターを思い浮かべるだろう。製品イノベーションを量産する消費者イノベーターが大半ならそのイノベーターを見つけ出し、継続的に彼(彼女)らの行動を追跡すれば効率的に製品イノベーションのアイデアを手に入れることができる。

しかし、消費者イノベーターの活動を詳しく分析すると話がそれほど簡単でないことがわかる。日本の消費者イノベーターの約半分は年1回以下しか製品イノベーションをしていなかった。状況は、米国も同じで64%の消費者イノベーターが年1回以下しか製品創造や改良を行っていなかった。

この結果が示唆するのは、たとえ消費者イノベーターを見つけ出したとしても半分以上は引き続き製品イノベーションを行うかどうかわからないということだ。少し乱暴な言い方をすれば消費者イノベーターの半分以上は「一発屋」であり、彼(彼女)を見つけて追跡し続けても革新的アイデアを手に入れることができるとは限らないということなのだ。