高速増殖炉が生む軍用プルトニウム

そうなると、政府が計画する中間貯蔵施設は、福島を「東北」というくくりで六ヶ所村と一体的に“接続”しようとする計画ではないかとの疑いが生じる。なぜなら、原発を再開したい国と電力会社にとって、暗礁に乗り上げた処理問題が付け焼き刃とはいえ“解決”するからだ。

10月31日、来日したベトナムのグエン・タン・ズン首相(写真左)と官邸で会談した野田首相。すでに2010年10月、日本企業が原子炉2基の建設を受注済みで、今後も主に新興国など海外向けの原発の輸出を本格化させる。(PANA=写真)

核廃棄物の中間貯蔵は米国の路線でもある。米国はブッシュ政権以来この10年間、「先進的燃料サイクルイニシアチブ」(AFCI)で核廃棄物の最終処分法を模索してきた。しかし、オバマ政権は11年7月29日、中間報告で大きく方針を変える。AFCIによる最終処分模索から「中間貯蔵路線」への方向転換だ。一国では処理できない大量の放射性核廃棄物を多国間連携で“処理”しようというものだ。米国追従の日本政府にとって、福島と六ヶ所村との接続は、新たな“指令”に応えるものとして、米国への次なる“貢献”ともなる。

だが、いずれにしろ当面の再処理は壁にぶつかっている。中間貯蔵施設の工程表を公表した同日、玄葉光一郎外相はインドのクリシュナ外相と会談し、「原子力協定の締結に向けた交渉を進める方針で一致した」と報じられた。原子力協定は原発関係の輸出入に必要とされる事前協定であるため、この方針決定で日本が原発関連事業を「国策」として続けることが国内外にあらためて明示されたことになる。当面の再処理はインドも担ってくれる。これも「多国間連携」か。

実は、06年3月の米印原子力協定合意時、インドの高速増殖炉は高純度プルトニウムを抽出できることが判明している。冒頭の「長崎原爆」に使用された核物質も、44年に米ハンフォード核施設が作り出した高純度のプルトニウム239。核兵器に使う「軍用プルトニウム」は、低濃縮ウランへの中性子照射で生じる一連の核分裂反応でプルトニウムを抽出し、さらに再処理技術でその純度を高めて抽出される。20数年前に武谷が示唆した「核兵器と原発は一卵性双生児」との指摘はこのことだ。従って、「核兵器廃絶」という呼びかけとは裏腹に、真意は核兵器を保有し続けたい国家にとって、原発は「軍用プルトニウム」入手に必要不可欠な「燃料製造装置」ということになる。