「そんなこと言っても、下らない雑用ばかり降ってくるんです」という「やらされ感」で潰れそうな人には「騙された」と思って1週間やっていただきたいことがあります。
「困っていることがあったら手伝いますよ」と隣の人に声をかけてみてください。「暇なの?」とびっくりされるかもしれませんが、「何かあったら遠慮なく声かけて」とひと言だけ残して笑顔で立ち去りましょう。でも、言い続けていたら、誰かが遠慮がちにでも頼んでくるはずです。そうしたらやってみてください。面白いことに、どんなつまらない仕事でも、自分から手伝う場合は「やらされ感」なんてゼロ。むしろ楽しくできるものなのです。
いいことはまだあります。「おまえの仕事は大丈夫なの」と誰かが聞いてくるようになります。困っているときに手助けしてくれる人が現われ、互いに気持ちよく仕事ができるようになります。「お手伝いの輪」が広がると、やらされ感で仕事をする人が職場からいなくなるはずです。
残念なことに、そういう輪ができる風土が日本企業から失われつつあります。自分のやりたい仕事だけをやって、アウトプットを最大化する人が評価されがちな時代です。経済規範が社内にまで幅を利かせているわけですが、いきすぎるとタコツボ化が起こり、組織としての態をなさなくなってしまいます。そうならないためには、他人に対して自分がどう貢献できるかという社会規範を社内に復活させなければなりません。
損得のパラダイムから相互支援のパラダイムへ。他人の依頼を「断る力」より、どんな依頼も「断らない力」が今ほど求められている時代はないと思います。自分がアイデアを出すよりも、アイデアをもっている人同士をつなげてみる。周囲が動きやすいように計らって他人を輝かせ、仕事の生産性を上げてあげる。そういう発想で働くときにやらされ感など入り込む余地はありません。