産業界や投資家にも不安が広がっている

毎日社説もこう言及する。

「IT産業や不動産業界への急激な締めつけは外国の市場にも動揺を引き起こした。産業界や投資家には政策の予測がつかないことへの不安が広がる」
「対外政策でも『戦狼せんろう外交』と呼ばれる強硬路線で権益の確保を推し進める。東シナ海や南シナ海、台湾海峡などの周辺地域では緊張が高まっている」
「習氏への権限の集中と歩調を合わせるように、国際社会では中国の振る舞いに対する懸念の声が上がる」

世界は中国のためにあるのではない。世界の「不安」「緊張」「懸念」を少しでも和らげる施策が、中国の習近平政権に求められる。

最後に毎日社説は「共産党の統治の下で、中国は驚異的な発展を遂げ、米国と覇権を争うまでになった。国際協調に背を向けては大国の責任は果たせない。習指導部が内向きの論理で独善に陥ることがあっては困る」と主張する。

中国に国際協調の姿勢があれば、かなりの問題が解決に向かうはずだ。真の大国とは何か。習近平政権はそれを考えるべきである。

「習氏が目指すのは、鄧が封印した個人崇拝の復活」と産経社説

11月13日付の産経新聞の社説(主張)は「『歴史決議』採択 個人崇拝強化への道具か」との見出しを掲げ、「強権的な習体制のさらなる継続に、国際社会は警戒と監視を強化しなければならない」と訴える。

沙鴎一歩も今回の歴史決議は習近平氏個人を讃えるための「道具」に過ぎない、と考える。

産経社説は「共産党100年の歴史の中で歴史決議は過去2回しかない。共産中国建国の父、毛沢東が1945年に、改革開放政策の生みの親である鄧小平が81年に、それぞれ主導してまとめた。今回、毛、鄧に比べて実績の乏しい習氏が歴史決議をまとめたことに違和感を抱く中国国民は少なくない」と解説したうえでさらに次のように説明する。

「特に鄧がまとめた歴史決議は、毛が発動した文化大革命を否定したことで知られる。鄧は、毛の個人独裁を危険視し集団指導体制を確立した」
「だが、今回の歴史決議は党の政策の過ちを正すものではない。単に、習氏の権威をさらに高め、長期政権への異論を封じ込めるためのものだ。習氏による習氏のための歴史決議である。習氏が目指すのは、鄧が封印した個人崇拝の復活にほかならない」

この解説はわかりやすい。特に「習氏は毛、鄧に比べて実績が乏しい」「違和感を抱く中国国民は少なくない」との指摘は重要だ。

産経社説は最後にこう書く。

「林芳正外相は自身が務める日中友好議員連盟の会長職を辞任し、『主張すべきは毅然と主張し責任ある行動を求める』と語った。当然である。第2次岸田文雄政権は、米国と連携して対中包囲網の核とならなければならない」
「中国共産党が4回目の歴史決議を採択し、習時代の誤りを正すのを待ってはいられない」

いまこそ、日本がアメリカと協力して正当な対中包囲網を築き上げるべきである。それは、国際社会での日本の地位を高めることにもつながるだろう。

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