イギリス82%、オーストラリア80%、アメリカ55%…
厚生労働省は11月26日、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、来年4月から積極的な「勧奨」を再開するよう全国の自治体に通知した。
子宮頸がんワクチンは2013年4月、小学6年~高校1年(11歳~16歳)の女子の児童・生徒に対し、定期接種(無料)がスタートした。しかし、接種後に倦怠感や痛み、運動障害など体の不調を訴える声が相次いだ。このため厚労省は同年6月に定期接種の位置付けのまま、個別に接種を呼びかける積極的勧奨を差し控えることを決め、これを都道府県や市町村の自治体に求めてきた。
その結果、接種率は低下した。厚労省によると、接種率は一時70%まであったが、勧奨を中止した2014年から1%前後に落下し、2018年には0.8%まで落ちた。これに対し、欧米の接種率は、2018年時点でカナダ83%、イギリス82%、オーストラリア80%、アメリカ55%などで、日本の接種率が異常に低い。
WHOはワクチンを推奨し、「撲滅できるがん」に位置付ける
子宮頸がんは、子宮の出口の頸部に発生するがんである。日本では毎年1万1000人の女性が罹患し、このうち2800人が死亡している。このがんの原因は、90%以上が性交渉によるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染だ。予防には検診とワクチンが必要だ。
ワクチンは200種類以上あるHPVのうち、がん化しやすい16型と18型の感染を防ぐのに有効とされる。厚労省のリーフレットによると、副反応の疑われる症例は1万人あたり9人、重篤な症状は1万人あたり5人で、副反応の出る割合はかなり低い。
WHO(世界保健機関)はワクチンを重要な予防手段として認めて推奨。子宮頸がんを「撲滅できるがん」に位置付け、9年後の2030年には女性の90%が15歳までにワクチン接種を終えることを目標に掲げている。
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会も「世界中で日本だけが子宮頸がん予防から取り残されてきた。勧奨再開は日本の女性の健康にインパクトを与える」との声明を出し、勧奨再開を歓迎している。