米国は選手団は派遣するが、政府関係者は送らない

アメリカ政府が来年2月に開催される北京冬季五輪・パラリンピックに政府高官を派遣しないことを表明した。選手団の派遣は行っても政府関係者は送らない、いわゆる「外交的ボイコット」である。

北京冬季オリンピックのフリースタイルとスノーボードのビッグエア競技の会場
写真=iStock.com/Vesa Niskanen
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新疆しんきょうウイグル自治区でのジェノサイド(集団殺害)など少数民族に対する迫害や、香港の民主派への言論統制・武力弾圧といった人権侵害を止めようとしない中国に対するバイデン政権の強い抗議だ。最近では女子テニス選手の彭帥(ポン・シュアイ)さんが一時消息不明となった問題も浮上している。

12月6日の記者会見で、アメリカのジェン・サキ大統領報道官は「中国に人道に対する罪と人権侵害がある限り、北京五輪にはいかなる外交・公式代表も派遣しないことを決めた」と語った。さらにサキ報道官は、この決定を同盟国各国に通知したことを明らかにしたうえで、「アメリカのように外交的ボイコットを行うかどうかの判断は、各国に委ねたい」と述べた。

イギリス、オーストラリア、カナダ、リトアニアが同調済み

こうしたアメリカの動きにイギリス、オーストラリア、カナダ、リトアニアが次々と同調し、外交的ボイコットの実施を明らかにした。一方、フランスは「五輪を政治化すべきでない」と外交的ボイコットを批判。ロシアもプーチン大統領が開会式への出席を表明している。

日本はどう対応するのか。岸田文雄首相は国会答弁で人権重視の姿勢を強調してきたが、日本は東京五輪開催で中国の協力を得ているし、経済的関係も強い。来年は日中国交正常化50周年の節目でもある。岸田政権は外交的ボイコットを実施するのだろうか。

岸田首相は7日午前、首相官邸で記者団に「オリンピックの意味やわが国の外交にとっての意義を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」と話し、独自に決めていく考えを示した。

この岸田首相の発言を受け、水面下では調整が続いている。