対立がエスカレートすれば、影響を受けるのは選手たち

12月8日付の毎日新聞の社説は「米国の北京五輪対応 亀裂深めない知恵が必要」との見出しを掲げ、「対立がエスカレートすれば、影響を受けるのは選手たちだ。亀裂を深めないよう、各国が知恵を絞らなければならない」と主張する。

毎日社説はどう知恵を絞れというのだろうか。そう考えながら読み進めると、後半でこう主張している。

「ここは改めて五輪本来の精神に立ち返るときだ。文化や国籍など違いを超え、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって平和な世界の実現に貢献する――近代五輪を提唱したクーベルタンの言葉を思い起こしたい」

オリンピックとは何なのか。各国が原点に戻って考え直す時期が来ている。開催を重ねるごとに巨大化するオリンピックマネーの問題、先進国としての威信を示す行動、国家としての存在感のアピール、国威発揚への利用など、五輪は「平和の祭典」から外れ、各国の思惑が持ち込まれる政治の現場になっている。

「政治色が強い五輪の現実を見直す契機に」と毎日社説

続けて毎日社説は主張する。

「中国テニス選手の『失踪』事件は、選手の尊厳より政治の都合が優先される危うさを映している。北京五輪は、大国間の駆け引きや国威発揚を含め、あまりに政治色が強い五輪の現実を見直す契機とするべきだ」

五輪から政治色を一掃することには賛成だ。しかし、開催国の中国の思惑が政権の権威を高めるところにある以上、北京冬季五輪での見直しは困難である。世界の大半の国々が習近平政権の人権侵害に対して「ノー」をたたきつけ、外交的ボイコットを表明することができれば、見直しの兆しは見えてくる。その意味でも岸田首相が外交的ボイコットを決定する価値は大きい、と沙鴎一歩は思う。

毎日社説は最後にこう訴える。

「国際オリンピック委員会(IOC)は『政治的中立』の立場から、今回の米国の決定を『尊重する』という。米中双方の顔を立てたいようだが、五輪の持続可能性を真剣に願うならば、大国の思惑に翻弄される現状をどう正すかを考えるべきだ」

開催国や参加国以上にIOCの意識改革が求められるのは、言うまでもない。「五輪の基盤は心身を磨く個々の人間であり、国家の威信ではない」とも毎日社説は指摘するが、IOCはそうした精神を取り戻してほしい。

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